コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%

1月12日、アメリカの最新のCPI(消費者物価指数)統計が発表された。12月のインフレ率は7.1%(前年同月比、以下同じ)となり、前月の6.9%から加速してついに7%台となった。

コロナ以後、インフレ率については前年比にすると比較対象の前年が極端に低い数字となってしまっていたため前月比年率を使ってきたが、そろそろ前年同月比に戻しても良いだろう。前月比のデータは月ごとの要因を打ち消すために恣意的な指数調整に頼っており、その不正確さが市場で問題になったこともある。出来る限り前年同月比を使ったほうが良いだろう。

インフレ率はついに7%台へ

さて、では物価上昇率のチャートを見てみよう。

コロナ後の物価の上がりようは見事である。現金給付と脱炭素がちゃんと仕事をしたということだろう。

グラフをもう少し詳しく見ると、12月に入って勢いはやや鈍化したように見える。夏頃に一度チャートに踊り場が出来ていることに注目すると、この踊り場は夏のコロナ蔓延が一因となって引き起こされたものであり、アメリカで現在の波が12月頃から始まったことを考えれば、今回やや勢いが落ちているのはオミクロン株のためかもしれない。

そうであれば1月や2月のインフレ率もやや減速し、同じような踊り場が出来る可能性もある。しかし逆に言えば、コロナが収まればまた物価の高騰が始まるということでもある。どちらが良いのか分からなくなってくる状況である。

上がり続ける住宅価格

ではいつものようにCPIの内容を見てゆこう。まずは金融緩和と現金給付によってもたらされた住宅バブルを反映している(はず)の要素、家主の見なし家賃からである。

家主の見なし家賃とは、家主が賃料を払ったと仮定して算出するCPI住宅関連の要素であり、12月の数字は3.8%の上昇となっている。

ほとんど垂直上昇である。

それもそのはずで、実際にはアメリカの住宅価格は2桁上昇となっており、3.8%どころではないのである。債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏ら専門家がこの要素が住宅市場の実体を表していないとして何度も批判している。

しかしそれでも実体を遅れて表してくるのであれば、家主の見なし家賃はこのまま上がり続けるだろう。そしてそれはコロナの波による経済の短期的な落ち込みにも影響されていないように見える。

エネルギー価格は一旦停止

次はエネルギー価格である。化石燃料の供給を無理矢理制限する脱炭素政策のために怒涛の上昇を続けていたエネルギー価格だが、12月は29.6%の上昇となり、11月の33.5%からやや減速した。

これは原油価格が冬より前に上がりきったこと、そしてオミクロン株が発見されたことで11月に下落を始めたことが原因だろう。アメリカの原油価格のチャートは次のようになっている。

原油価格はコロナの波をある程度反映する推移となっている。CPI全体の夏の踊り場も夏の原油価格の下落が一定の役割を果たしているだろう。

結論

だが原油価格は回復している。今後物価はどうなるだろうか。現在7.1%の物価の今後の推移がアメリカの利上げを左右し、アメリカの利上げが世界の株式市場の命運を握っている。

まず今短期的に経済を抑えているコロナには波があるので、アメリカでは春前には状況は今よりは良くなっているだろう。

更に物価全体、そして原油価格に影響を与えるのが、金融政策の水準である。そしてアメリカの中央銀行が今どうしているかと言えば、インフレ率が7.1%の高さにある中で、金利を0%から0.75%に上げるかどうかを話し合っている。

それでインフレが止まるわけがないのである。1970年代の物価高騰では政策金利をインフレ率より上に上げなければインフレは止まらなかった。

何度も言うが0.75%は低金利である。しかしその低金利でさえ株式市場を殺してしまうかもしれない。

アメリカ経済は完全に終わっている。中央銀行はいずれ利上げの更なる加速を表明し、株式市場は下落するだろう。慌てた中央銀行が緩和を再開し、ドルが暴落するところまでを専門家は既に織り込んでいるのである。