DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がYahoo! Financeのインタビューで次の下げ相場とドル相場の見通しについて語っている。
利上げで景気後退へ
先週の記事でガンドラック氏は2022年の最大の懸念はFed(連邦準備制度)の利上げだと主張していた。
ガンドラック氏は次のように繰り返す。
これまで述べたように、債券市場は景気後退のシグナルを十分に発している。2023年までに景気後退入りをする可能性が高いと言っている。
彼はアメリカ経済にとって危険水域となる利上げの回数を具体的に挙げている。
たった4回利上げをするだけで景気後退の香りがそこら中にし始めるだろう。今年中に景気後退入りする可能性もゼロではない。それはFedがどれだけ利上げを強行するかによる。
金融市場は今年中に3回か4回の利上げを織り込んでいるが、今後の物価上昇率によっては更に急激な利上げを強いられる可能性もある。
ガンドラック氏を含む多くの著名投資家が見込んでいるのが、そうした利上げが株式市場と実体経済を墜落させるというシナリオである。
何故ならば、利上げを行わずに緩和を続ければ、既に6%を超えているアメリカの物価上昇率がトルコのように青天井になってゆくだろうからである。
ついにドル暴落へ
つまり、アメリカは株価が暴落することを承知で利上げを行わなければならなくなる。
しかしアメリカにとって崖っぷちなのは株価だけではない。利上げによって引き起こされる次の景気後退において本当に危険なのは、ついにドルが暴落するだろうということである。ガンドラック氏は次のように述べている。
ドルが基軸通貨であるというストーリーも終わりを迎えようとしている。
次の景気後退でドルは下落相場になる。ドルは双子の赤字にもかかわらず大きく過大評価されている。
アメリカは財政という意味ではこれまでかなり好き勝手にやってきた。量的緩和によって無尽蔵に紙幣を印刷し、財政赤字と貿易赤字を垂れ流し、アメリカから資金は流出し続けているのに、それでもドルは暴落しなかった。
その理由は、以下の記事で説明したように、放漫な財政から為替レートの暴落までの間にはタイムラグが存在するからである。
事実、ドル円のチャートもむしろインフレを原因とする利上げ観測で上がっている。
しかし考えてみてほしいのだが、インフレとは貨幣価値の下落である。それで何故ドルが上がるのだろうか? インフレ率が6%だということは、ドルが6%減価したということである。
それが利上げという短期的な事情でドル高に繋がっているのだが、このインフレに起因するドル高はどう考えても持続可能ではない。何処かのタイミングでこの上昇相場は転換せざるを得ないのである。
そのタイミングはいつか? 筆者もこれまでに述べてきたように、ガンドラック氏も転換点となるのは次の株価暴落と景気後退だと考えているらしい。リスクオフがこれまで着々と溜まってきたドル安要因を一気にすべて吐き出すだろう。
ガンドラック氏はラクダの背に背骨が折れるまで1本ずつ藁を載せてゆくたとえを用いて次のように述べている。
次の景気後退で政府が経済を救済しようとするとき、それがラクダの背骨を折る最後の藁になるだろう。それでドルは下落する。
そしてBridgewaterのレイ・ダリオ氏も同じことを考えている。
ドルと株価の暴落はもはやそうなるかどうかの問題ではない。単にタイミングがいつかという問題なのである。