アメリカのインフレが中央銀行を金融引き締めに追いやっている。この金融引き締めは恐らく来年中に株価が耐えられない水準にまで強まるだろう。
2022年の株安相場
いつが株式市場の天井になるかという話もここではしているが、ピンポイントで当てることはプロでも困難である。
筆者はそもそもこの状況で株式に賭けるようなことはしていないが、農作物などコモディティのポジションは持っており、株価が下落すればコモディティも影響を受ける可能性が高い。
インフレが問題となっている状況でコモディティを手放すことにもリスクがある。だから、リスクオフで利益が出るようなポジションを同時に持っておくのが良いだろう。筆者にとってそれはスイスフランであり、米国債のポジションである。
これらは既に利益を挙げてくれている。しかし他に良いポジションはないだろうか。
株安とジャンク債
ジャンク債、つまり倒産の可能性の高い企業の債券は、株価とともにリスクオフで下落するハイリスクの資産として知られている。株安とリスクオフで国債の価格は上昇するが、ジャンク債の価格は下落する。
債券市場の専門家であるジェフリー・ガンドラック氏が、コロナ禍で債務が膨らんだ経済においてはジャンク債は株式よりも先に下落を始めるはずだと主張している。それで筆者も興味を持ったのである。
そこで株安相場とジャンク債についてもう少し考えてみよう。まずコロナ後から現在までのジャンク債ETFのチャートを見ると次のようになっている。
既に失速が始まっているように見える。ただ、このジャンク債ETFには株価とは別に4.44%の配当があるので、合計のパフォーマンスはもう少し良いものである。しかしそれも含めても徐々に怪しくなっていることは間違いない。
インフレとジャンク債
インフレに関して言えば、どう考えてもインフレはジャンク債に不利である。ジャンク債の利回りは国債の利回りにどれだけプレミアムが付くかによって決まる。国債の利回りはインフレ率に対してどれだけプレミアムが付くかで決まる。
つまり次のようになる。
- ジャンク債の金利 = インフレ率 + 国債の実質金利 + ジャンク債プレミアム(スプレッドと呼ぶ)
よってインフレ率が上がればジャンク債の金利も上がる。債券にとって金利上昇は価格低下を意味している。
つまり、インフレで景気後退というシナリオに賭けるには、ジャンク債の空売りは最適な選択肢となる。インフレが直接価格下落の原因になるからである。
株の下落とジャンク債の下落
しかしジャンク債の下落と株価の下落が同じタイミングになるならば、あまり良いヘッジにはならない。結局株価の下落のタイミングを厳密に当てる必要があるからである。
一方、ガンドラック氏の言うようにジャンク債の下落が株の下落に先行するならば、これほど良いヘッジはない。
そこで、過去の下落のケースで実際にどうなったのかを見てみると、同じように金融引き締めで株価が暴落した2018年の世界同時株安の時にはジャンク債は次のように推移している。
この時米国株は次のように推移していた。
2018年には初頭にまず一度目の急落があり、そこから立ち直った後、秋頃に本格的な下落相場があった。その間中央銀行は金融引き締めを行い続けている。
これらのチャートを眺めると非常に良いニュースがある。ジャンク債ETFは株価がまだ力強く上昇していた2017年末には既に下落を始めており、その後ほぼ一貫して下がり続けているということである。
結論
これは恐らく非常に良いヘッジになる。スイスフランなど筆者のリスクオフトレードの中にジャンク債の空売りが加わったことになる。流石は世界屈指の債券の専門家の言うことである。
これとは別の話になるが、恒大集団がどうやらようやくデフォルトしたようである。筆者の2022年見通しに必要なピースがすべて揃ってきたように思う。投資家は十分に注意する必要があるだろう。