前回はレイ・ダリオ氏のBridgewaterを扱ったが、今回はジョージ・ソロス氏のSoros Fund ManagementのForm 13Fである。
開示された米国株買いポジションの中にはどんな銘柄が含まれているだろうか。
ソロス氏のポートフォリオ
ここの読者にはお馴染みForm 13Fは機関投資家の米国株買いポジションを開示するものであり、今回は9月末のデータとなる。
ジョージ・ソロス氏のファンド(現在はドーン・フィッツパトリック女史が主に運用している)が前回6月末の開示でインフレ対策の銘柄を買っていたことを思い出したい。
その銘柄はアメリカの不動産ディベロッパーD. R. Hortonで、ポジションの規模は3.9億ドルだった。アメリカの物価高騰の原因は脱炭素による化石燃料の高騰と、コロナ対策の景気刺激策による住宅価格の高騰である。
不動産ディベロッパーへの投資は後者の流れに乗るためのものである。
今回の開示ではD. R. Hortonのポジションは3.6億ドルに減少している。しかしこれは9月末に株価が下がっていたためで、株数を見ればむしろ増加している。下落したところで買い増したということである。
その結果はどうなったか? D. R. Hortonの株価チャートは次のようになっている。
9月末はまさに底だったようだ。ビットコインを見事に底値買いしたフィッツパトリック氏の手腕は健在のようである。
インフレでIT株を減額
一方でポジションを減額されているのがハイテク銘柄である。Amazon.comは3.3億ドルから3.0億ドル、Googleの親会社Alphabetは1.7億ドルから1.6億ドルにそれぞれ減らされている。
Amazon.comの株価は以下のように推移している。
Alphabetは以下の通りである。
どちらも動きは悪くない。では何故減額されたのか? それは恐らくインフレを警戒したためだろう。
インフレとは今後数パーセントずつ現金の価値が減価してゆくことで、毎年同じ割合で減価してゆけばその減少率は来年よりも10年後の方が大きい。ハイテク株を含む高成長株のバリュエーションは比較的遠い未来に入ってくる現金に依存しているので、インフレの影響を普通の株より大きく受けるのである。
ソロスファンドは株式市場にやや弱気か
以上、Soros Fund Managementのポートフォリオを概観した。総体としてやはりインフレを警戒したポートフォリオとなっており、Form 13Fに報告されているポジション総額も59億ドルから54億ドルに減額されている。CEOのフィッツパトリック氏の相場観通りのポートフォリオという感じである。
一方でソロス氏の弟子であり、フィッツパトリック氏の先輩にあたるスタンリー・ドラッケンミラー氏は真逆のポジションを取っている。また別に記事を書くので楽しみにしてもらいたい。