世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、LinkedInのブログでますます高まるアメリカのインフレについてコメントしている。
止まらないアメリカの物価高騰
先日、アメリカではCPI(消費者物価指数)が発表され、物価上昇が30年ぶりの高水準であることが示された。
かねてより紙幣印刷が最終的にはインフレを生むと主張してきたダリオ氏がこれに反応したのは当然だろう。彼は次のように述べている。
昨日のインフレ統計はインフレが高まっており、人々の財産を溶かしていることを示している。これは当然である。
去年コロナの流行が始まり、現金給付や様々な救済措置が発表された時から筆者やダリオ氏やジェフリー・ガンドラック氏のような投資家たちは当たり前のように物価高騰が起こるとして警告を続けてきた。
そしてそれが当たり前のように現実となっている。
まともな金融家には何の驚きもない、政治家によって引き起こされた経済危機がアメリカを襲っている。政治家が国民を襲っていると言っても良いだろう。票田にばら撒くために国民の生活を犠牲にしたからである。そして日本では、国民は自分を害した政治家に対して犬のように寝転んで腹を撫でられようとしている。自民党支持者のことである。
不可避の物価高騰
好む好まざるに関わらず、インフレは来る。日本でもガソリン価格が高騰しているが、こんなものはまだまだ序の口である。ダリオ氏は次のように続ける。
一部の人々は資産価格が上がって裕福になったと勘違いしているが、自分の購買力がどれだけ溶けているかを考えていない。一番被害を受けるのは、資産を現金で持っている人だ。
ダリオ氏は数年前から現金はゴミだと言い続けてきた。
それは当時は現金よりも金融資産をという意味だったが、今では現金を持っていてもものは買えないという意味に変わった。それがインフレの意味である。そういう時代が来ようとしている。
状況を上手く説明するために、ダリオ氏は4つの定式を立てている。
- 資産 = 購買力
- 資産 ≠ 金融資産
- 資産の創造 = 生産すること
- 資産の減少 = 購買力の減少
要するに、資産価格が上がってもそれを売却してものが買えなければ何の意味もないとダリオ氏は言っているのである。そして豊かになるためには紙幣を印刷するのではなく、ものを生産する必要がある。ダリオ氏は以前言っていた。
紙幣は食べられない。
インフレ対策
人々はどうするべきだろうか。例えば株式の購入はインフレには勝てないのだろうか。
1970年代から80年代のアメリカのインフレでは、株価はインフレに大いに負け、インフレを差し引いた実質リターンでは酷い状況に陥っている。以下の記事は再読の価値があるが、当時の株価をインフレ率で割ったチャートを再掲載しよう。
アメリカ株が10年間マイナスリターンだった時代があったのである。そしてそれはインフレによってもたらされた。この意味が今の投資家に分かるだろうか。
アメリカの凋落
物価高騰とは貨幣価値の暴落であり、それは一定のタイムラグを経て為替相場におけるドルの暴落に繋がる。ダリオ氏がその先に見ているのはアメリカの凋落である。
ダリオ氏は人々が政府から降ってくるお金でリッチになった気分になる代わりに貧困に突入するのではなく、ものを生産することで豊かになってほしいと願っている。
アメリカは収入よりもよほど多くの消費をしており、しかもそれをばら撒かれて減価している紙幣で支払っている。状況を改善するには協力してより生産するしかない。今のところ、われわれは間違った方向に進んでいる。
だが人々がダリオ氏の賢明な助言を聞くことはないだろう。人々は賢明ではないからである。