最新のアメリカのCPI(消費者物価指数)が発表され、10月は11.9%(前月比年率、以下同じ)の上昇となり、前月の5.1%から急加速した。
止まらないアメリカのインフレ
ついに家計に影響が出るレベルのインフレになってきたと言えよう。まずは全体のチャートを見てみよう。
見事に跳ね上がっている。夏場に半導体不足で中古車価格が高騰した時から一時的に収まっていたインフレが再発してきた。春過ぎに以下の記事でジェフリー・ガンドラック氏が予想していた通りの展開であり、流石は債券投資家だと言うべきだろう。当時の彼の発言は読み返す価値がある。
さて、ではCPIの内容を見てゆくが、夏にはインフレ高騰を先導していた中古車の10月の価格上昇は34.5%となり、前月のマイナス成長-8.1%から持ち直してはいるが、チャートを見れば一時のような強烈な高騰は収まっていることが分かる。
今回のCPIを押し上げたのは中古車価格ではなさそうである。
では住宅価格はどうだろうか? 住宅の価格を反映する CPIの要素である持ち家の見なし家賃(持ち家に家賃を払うと仮定して産出する項目)は5.4%の上昇となり、前月の5.3%から僅かに加速した。
上昇率は高止まりしており、住宅バブルは続いていると見るべきだが、先月からあまり変わっておらず、こちらも今回全体を押し上げた項目ではないだろう。
高騰するエネルギー価格
ではエネルギー価格はどうだろうか。10月のエネルギー価格は年率74.9%の上昇となり、前月の16.5%から大きく跳ね上がった。
明らかにこれである。脱炭素な人々が原油と天然ガスの供給を無理矢理制限した結果、エネルギー価格が高騰している。当然の結果で本当に馬鹿ではないのかと思う。
原油価格のチャートは次のようになっている。
原油価格もそうだが、天然ガスの高騰はより深刻で、脱炭素政策を特に推し進めたヨーロッパでは貧しい人々が暖房なしで日本より寒い冬を過ごさなければならない瀬戸際になっている。
脱炭素を推し進めた張本人であるリベラル派の裕福なヨーロッパ人たちは、それでも暖房の効いた部屋で冬を過ごすのだろう。彼らが偽善者でなければ誰がそうなのだろうか。
他に波及するエネルギー価格高騰
電力価格の高騰だけでも家計には結構なダメージだが、原油価格高騰はそれだけでは終わらない。
例えば衣料品の価格は今回0.0%と完全に横ばいだが、高い原油価格が定着すれば化学繊維の価格を通して衣料品価格も上昇してくるはずである。
更に、砂糖やコーンなどの一部の農作物はバイオ燃料になるためエネルギー価格と連動している。つまり、エネルギー価格が高騰すると農作物も高騰する。しかしタイムラグがある。それが本格的にスーパーの食料品の価格に反映されてくるのは恐らく来年のことだろう。