マイナード氏: 物価高騰か資産バブル崩壊か二者択一

引き続きBloombergによるGuggenheim Partnersのスコット・マイナード氏のインタビューである。

アメリカ経済の実情

日本が現金給付で盛り上がっている間にヨーロッパではコロナの流行が止まらず、アメリカでは今や投資家だけではなく国民もインフレについて懸念し始めている。アメリカ経済の減速も一部の投資家は理解し始めているだろう。

だがインフレについては去年から分かっていたことであり、アメリカ経済の減速も夏の段階で筆者には明らかだった。

そして一部の投資家がようやく経済減速について考え始めている今、筆者やマイナード氏は景気後退について話すわけである。

マイナード氏は次のように始めている。

景気後退が起こるためには2つの道がある。コロナの流行のようなショックか、経済が少しずつ停滞してゆくかだ。

ショックの方は例えば中国の不動産危機がアメリカ経済に影響を及ぼすことだろう。緩やかな停滞の方は、今既にインフレが止まらないために実質経済成長が減少してアメリカ経済は勢いを失っている。それに加えて中央銀行は引き締めに向かっている。これはいずれ景気後退に繋がるだろう。

ようやくマイナード氏が中国恒大集団の問題に言及した。筆者は最初からこれが巨大な問題だと主張していたが、中国経済が専門ではないからか、何故か著名投資家たちはこの問題に触れて来なかった。少しでも言及したのは、中国株を買っているので言葉を濁さざるを得なかったレイ・ダリオ氏くらいである。

来年の経済見通し

マイナード氏は「ショックか徐々にか」と述べているが、筆者は両方だと考えている。丁度来年がターニングポイントである。来年にはアメリカ経済の減速が(元々明らかではあったが)より明らかになり、既に崩壊している中国の不動産市場の崩壊に欧米の投資家の大半が気付く頃合いだからである。

他の投資家よりも先が読める投資家は他の投資家がそれに気付くまで待つ必要がある。

その時には中央銀行とバイデン政権は選択を迫られるだろう。インフレが下がらない中経済が減速する。緩和をすれば物価高騰が本当に止まらなくなり、緩和をしなければ景気後退と株価バブル崩壊が待っているだろう。マイナード氏は次のように述べている。

中央銀行は2%のインフレ目標より恐らく高くなる物価を受け入れるか、資産価格を崩壊させ金融システムに被害が及ぶリスクを犯すかのどちらかを選ぶことになる。

そして恐らく政府は物価が高騰し誰も何も買えなくなることを選ぶだろう。そしてドルが暴落する。マイナード氏もダリオ氏もそこまで分かっている。分かっていないのは有権者と政治家だけである。

結論

アメリカ経済は現金給付によって完全に詰んでしまった。日本は自分で池に落ちることを選んだアメリカの後を追って池に落ちようとしている。

2022年は恐らく消費者にとってかなり厳しい年になる。読者も投資家としてだけではなく、消費者として備えをしておいた方が良いだろう。スーパーに売っているものは来年は今年の値段で買えなくなるからである。そしてそれは現金給付と脱炭素が続く限り続く。