何度も書いている通り、世界の経済大国を見回してみれば、大幅に成長している国はない。中国の景気減退を含めて世界的な需要減を懸念して銅や鉄鉱石など多くのコモディティ価格が大暴落している。
しかしながら、それでも世界のすべての国が低成長であるわけではない。そこで一度、主要国の経済を俯瞰し、投資家にとって何処に利益の機会があるかを探してみたい。
主要4カ国
上記は日米英独4カ国のGDP成長率(前年同期比)のグラフである。見ての通り、日本経済は量的緩和を開始してからは堅調であったが、2014年4月に消費増税が行われて以来、他の3カ国に大きく遅れを取っている。2017年に更なる消費増税が予定されていることもあり、日本経済はゼロ成長を数年続けることになるだろうと予想している。
一方で、2008年の金融危機時に量的緩和を速やかに開始したアメリカとイギリスは、量的緩和を既に停止しているにもかかわらず堅調であり、アメリカの経済成長は2.32%、イギリスは3.11%であるが、日本やユーロ圏が量的緩和で通貨安を演出している中、両国の経済が他国の通貨安政策にどれだけ耐えられるかが問題となっている。
ドイツの経済成長率は1.60%であり、量的緩和の恩恵を受けている割には明るくない数字ではあるが、経済成長より財政再建に熱心なドイツとしてはこれで満足なのだろう。
主要各国の脆い成長
アメリカとイギリスの数字は決して悪い数字ではないが、通貨高による輸出減速が懸念されており、しかも両国の中央銀行はこれから利上げを行おうとしている。逆に量的緩和を実行中の日本とドイツの経済はあまり良い数字とは言えず、投資家は何処に投資したものか迷うというのが実情だろう。
一方で途上国の経済は減速中の中国経済や米国の利上げに大きく影響されるところが多く、こちらも投資先に適しているとは言えない。では投資家には本当に選択肢がないのだろうか? 実はまだ検討していない国々が残っている。
ようやく復活しつつある南欧諸国
それは何処の国だろうか? 南欧である。つまり、スペインやポルトガルである。これらの国々はユーロ圏の債務危機で景気後退に入っていたが、ユーロ安や量的緩和の開始を受けて最近では持ち直している。経済成長率がどうなっているかを先ず見てみたい。
驚くべきはスペインの回復である。最新のデータでは主要4カ国でトップであったイギリスの3.11%をも上回り、3.14%の経済成長となっている。ポルトガルもリセッションを脱し1.59%、ギリシャまでもが1.63%の経済成長率となっている。
数年続いたユーロ圏の景気後退もようやく終わりを告げ、ユーロ圏を主導するドイツも以前と比べれば緊縮財政の強要を弱めつつある。量的緩和も低金利とユーロ安を演出しており、利上げに向かっている米国や英国に比べて株式市場への追い風もある。
では株式市場はどうなっているだろうか? 順番に見てゆこう。
米国と日本
先ず日米はここでも書いてきた通りである。米国株が一番底と半値戻しの間を行き来し続けている一方で、日本株のチャートは比較的形が崩れている。リスクオフ時には円高になりやすいため、日本株は米国株よりも売られる傾向にあるためである。利上げの延期が続く限りこの傾向は続くが、利上げとなればこの傾向は逆転することになる。
英国
イギリス株は最近の反発でようやく半値戻しを達成した形である。前述の通り、イギリス経済のファンダメンタルズは主要国中最高であるが、米国と同様利上げや通貨高の懸念がある。
ドイツ
ドイツ株のチャートはイギリスよりも悪い。量的緩和の開始を受けて好調であった分の反動で下げているとも言えるが、ドイツ経済はアメリカやイギリスほど好調というわけでもない。
しかし、ユーロ圏に居ることで一番恩恵を受けているのはドイツであるので、セクターごとに見れば魅力的な側面もあるはずである。したがって、ドイツ株を買うときには指数よりも個別株を精査することが重要だろう。
スペイン
さて、本命のスペイン株であるが、他国に比べてほとんど落ちていない。これまで紹介したチャートのなかで、急落前のレンジに辛うじて触れているのはイギリスとスペインのみであり、その内スペインのほうが急落時の谷が浅い。
スペインは実体経済と金融政策の両方が株式市場に味方している唯一の国であり、スペイン株の相対的な好調はこれからも続くと推測している。株式市場の反応もそれを裏付けた形となる。
結論
2015年以降の不安定な株式市場では、少しでも見込みの良い市場に賭けることが非常に重要であり、実体経済と金融政策の両面から買いが正当化できるスペイン株は主要国唯一の有力な選択肢である。但し、金融政策の先行きに注意することが必要となるだろう。
ユーロ圏の失業率は11%といまだ高く、逆に言えば改善の余地が大いにあるため、スペインに続く経済回復を見せる国が今後出てくる可能性がある。ポルトガルなどその他の南欧諸国にも注目したい。