中国のGDP2%分の負債を抱えてデフォルトの危機にある中国の不動産ディベロッパー恒大集団は、許会長の個人資産を使って利払いを続けることで崖っぷちでデフォルトを回避し続けているが、その間にも中国の不動産会社は次々に倒産し続けている。
生き延び続けている恒大集団
先ずは恒大集団の近況からお伝えしよう。恒大集団は9月からオフショア(海外発行)債券の利払いを踏み倒し続けており、これらの債券には30日の猶予期間があるため期限から30日間はデフォルトにならないが、30日ほとんどぎりぎりで利払いを何とか履行しデフォルトを免れている。
それでも恒大集団は債務再編なしにこの倒産危機を乗り越えることは出来ないだろう。利払いが停止するのも単に時間の問題なのだが、それでも今のところ倒産を免れている理由は、中国当局が許氏に個人資産を使って借金を返済するよう迫ったからである。
それで許氏はまず香港に所有する邸宅を抵当に入れて3億香港ドル(約44億円)を借り入れた。これらの資金を利払いに使っているわけである。邸宅はもう返ってこないだろう。
こういう状況なので、債権者の目は恒大集団の財務状況ではなく許氏の財務状況に向かっている。彼が保有する住宅やヨットなどがいくらになるかということが、債券保有者にとって自分のお金が返ってくるかどうかにかかわるという面白い状況になっているのである。
中国の不動産業界はもう駄目か
それでも許氏は恒大集団の明るい未来を諦めていない。許氏は先月に経営再建計画を発表し、恒大集団は10年以内に不動産業を大幅に縮小し、電気自動車メーカーへと生まれ変わると宣言した。素晴らしい名案ではないか。パンが駄目ならケーキを食べれば良いのである。しかしそれはもはや別の会社である。
ただ、注意してもらいたいのは、許氏の話はただ面白いだけではないということである。以下の記事にも書いたように、これまでも許氏は様々な発言を通して投資家に業界内部の情報を提供してくれていた。
そして今回の再建計画から分かることは、中国の不動産業界はやはりもう駄目だということである。許氏は不動産業における再建を完全に諦めている。恒大集団の問題は恒大集団1社だけの問題ではなく、中国の不動産バブルが崩壊するという問題なのである。中国大手の不動産ディベロッパーのトップが言うのだから間違いないだろう。
その予想を裏付けるように、恒大集団が許氏の個人資産によって延命される中、他の不動産会社は次々にデフォルトしている。
まず、10月15日には中国地産集団が2億2,600万ドルの社債を償還できずに債務不履行に陥った。更には11月4日に佳兆業集団の子会社が理財商品の支払いに失敗、佳兆業集団の株式は取引停止となった。
結論
日本や西洋の投資家は恒大集団のことなど忘れているが、中国の不動産バブル崩壊の問題は何も解決することなく着々と進んでいる。
不動産価格は下落しているのは報じた通りだが、更には李克強首相が「中国経済は新たな下押し圧力に直面している」と表明した。中国の上層部がそれを認めるというのは、つまり中国経済の状況はもう隠しようがないほどに悪いということである。
この投資テーマに真っ先に目をつけたジョージ・ソロス氏はやはり只者ではない。91歳とは思えない頭の冴えである。