GDP統計でアメリカ経済の減速は明らかになり、中国の恒大集団の問題も徐々に中国の不動産市場全体へ波及してきた。相場が新たな局面に向かっている過渡期であり、手札は既に揃っているので後は状況が進展するのを待つだけだと言える。そこで今回の記事では少し前の投資アイデアを振り返ってみよう。
日銀の日経ETF買い入れ
長らく市場に影響を全く与えられていない日本の中央銀行こと日本銀行だが、今年の3月19日に少し面白い発表をした。
それまで日銀は量的緩和政策の一環として株式ETFを買い入れており、具体的には日経平均に連動するETFとTOPIXに連動するETFを買い入れていたが、日銀は日経平均に採用されている225銘柄を贔屓する理由はないとして日経平均ETFの購入を止め、より多くの銘柄に投資できるTOPIXのETFに一本化すると発表したのである。
この発表は大手メディアではあまり大きく取り上げられなかったが、市場への影響は明らかに少なくない。何故ならば、日経平均採用銘柄、特に構成率の大きいファーストリテイリングなどの一部の銘柄は、日経平均ETFが日銀に買われることによってファンダメンタルズでは説明できないほど割高になっていたからである。
特に日経平均の10%以上を占めていたファーストリテイリングの株式は、その最大の買い手である日銀を失うことになる。どう考えても暴落は必至である。当時の記事ではそれを伝えたのだが、その後ファーストリテイリングはどうなったか。
3月から見事に下落している。当たり前である。
ちなみにファーストリテイリングだけではなく、日経平均全体のパフォーマンスも3月以降TOPIXに劣る形となっており、日経平均売り、TOPIX買いの裁定取引もきちんと機能した。
結論
ちなみに現状ではファーストリテイリングの株価収益率は44倍となっており、割高ではあるが馬鹿げている水準ではなくなったとは言える。日銀が買わなくなったとはいえ広く知られた株価指数の構成率首位の銘柄であり、日銀の政策変更による空売りはとりあえずここまでで良いだろう。
特に今年の半ばは日本株のパフォーマンスが必ずしも良くなかった時期であり、そうした時期に単純な買い以外の収入源があることは投資家には有難い。戦略の種類を増やすことは投資家にとって重要である。