衆議院選挙を控え、丁度良い時期なので、以前書いた記事を更新し、日本経済を復活させるためにはどうすれば良いのかをもう一度考えてみよう。
今回は各党の経済政策も紹介しながら政策提言を書いてゆきたい。しかしここではっきりさせたいのは、自民党の政策が保守ではなく完全な左派であるということである。
現金給付
まずはコロナ禍で話題の現金給付から始めよう。
自民党は「困っている人に給付」、立憲民主党は低所得者に12万円、共産党は中間層も含めて10万円、維新の会は6万円から10万円のベーシックインカムとなっている。
まず1つ言えるのは、現金給付を行うくらいならば減税で良いということだ。政府から10万円程度が貰えるということで喜んでいる人々が多いが、はっきり言うがそれは自分が払った税金が少し戻ってきただけの話である。
日本国民の大半は10万どころではない税金を毎年納税しており、何百万取られた代わりに10万貰って喜んでいる自分の姿を少しは想像してもらいたい。強盗に100万取られたが10万返してもらって喜ぶ人がいるだろうか。政治の世界では、何故か居るのである。
更に悪いことに、この給付額と給付対象は政治家が自分の得られる得票数を考えて恣意的に決定する。減税であれば自分の稼いだお金がそのまま自分のところに入ってくるのだから公平だが、この公平さを捨てて現金給付にする意味は、政治家が国民に得をさせたという幻想を抱かせることと、票田に金を撒くこと以外に何かあるのだろうか。
それよりも更に悪いことに、この現金給付は日本の3倍以上の規模でアメリカで行われ、溢れた資金はエネルギー価格や農作物価格などの高騰を引き起こした。金が降ってきたという幻想は「それが泡銭である」という錯覚を引き起こし、コロナで工場などが停止している供給の足りない経済的場面で需要を増加させるからである。
日本の現金給付はこれまでアメリカの1/3以下の規模だったから良かったものの、2回目以降を行うのであれば話は変わってくる。
ヨーロッパでは天然ガス価格が5倍になったために既に真冬に暖房が使えない人も出てくる状況である。
脱炭素政策による化石燃料高騰も含めるとアメリカやヨーロッパの国民は物価上昇によって10万円では済まない損失を負っているのだが、日本人は本当にその真似がしたいのだろうか?
消費税
続いて消費税である。消費税は長らく5%だったが、その後自民党によって段階的に10%にまで引き上げられた。
現状ではこれを維持したがっているのが自民党で、立憲民主党と維新の会が5%への一時減税、共産党が5%への恒久減税となっている。
日本の財政は長らく増税と予算膨張を繰り返してきた。それが自民党の政治である。政府がより多く徴収し、より多く資金の使用先を決めるということである。
この政治方針のことを大きな政府と言う。逆により少なく徴収しより少なく使用する政府を小さな政府と呼ぶ。そして世界の常識では大きな政府は左派、小さな政府は右派なのである。
これは共産主義とは何であるかを考えてみれば当然である。共産主義とは政府が資源の配分を決めるやり方であり、政府が国民から資金を徴収して誰に振り分けるかを決める大きな政府は、共産主義の定義そのものであり、当然ながら左派である。
政府に予算の使い方を決めさせればどうなるか、日本国民はコロナ禍で思い知ったはずである。コロナ禍で多くの国民が金銭的、時間的、精神的負担を払っている時に自民党が行なったのはGO TOトラベルと東京オリンピックだった。
日本人は東京オリンピックに3兆円が費やされたという事実を本当に分かっているのだろうか? 東京の真ん中に打ち立てられた巨大な便器だけでも1,569億円も日本人は払ったのである。
打ち立てるにしてももう少しマシなものはなかったのだろうか。GO TOトラベルも含め、すべては自民党が国民から徴収して自分の票田にばら撒くためだけの政策である。
こうした無駄な税金は減らすことが出来ない訳ではない。誰も文句を言わないから減らないだけである。これだけのことをされても日本国民は笑いながら自民党に投票する。だから減らないのである。
また、経済学的な観点からも消費税は撤廃して所得税と法人税に一本化すべきである。所得税や法人税は個人や企業の利益にかかるが、消費税は経済のトランザクションそのものにかかる。
消費税は経済活動を阻害する悪法なのだが、何故自民党が消費増税を好んで法人減税を行いたがるかと言えば、消費税は海外での売上には掛からないため、大企業は消費税をほとんど払っていないからである。経団連が大喜びというわけである。
私権の制限
コロナ禍で問題となるのがロックダウンなど私権の制限を伴う法的措置である。これについて自民党の岸田氏は、緊急時に政府の権限を拡大する緊急事態条項の創設を巡って、感染症への対応を追加することを議論すると表明している。
これは実質的に強制的なロックダウンを可能にする。「国民ではなく政治家が決める」を旨とする左派(大きな政府)の自民党なのだから当然の選択だろうが、簡単に言えばコロナ禍で好き勝手にしていた日本政府にもっと好き勝手にさせろということである。
他の政党はどうかと言えば、立憲民主党と維新の会もロックダウン支持、共産党がロックダウン反対である。
「議席なし」投票
ここまでの議論で給付金などの経済政策と私権制限についての大枠は説明した。残念ながら給付金に反対する政党はない。
こうした状況で思い出されるのは、経済学者ミルトン・フリードマン氏の次の言葉である。
こうした政策の中身は、現実には政府がまったく恣意的に国民の一部から税金を略奪して国民の他の一部に補助金として与えるということでしかない。
したがって今回の記事では、経済政策ではないが選挙制度改革として次のことを提案したい。選挙を行う時、投票先として政治家や政党の名前の他に「議席なし」を加える。この「議席なし」が最大の票数を獲得した場合、その選挙区から選出される議員はゼロとする。
はっきり言えば、政治家にはもういい加減にしてもらいたいのである。飲食店や国民に過大な負担を強いながら自分は利権の温床である東京五輪を実行し、しかもこれまで以上に国民の行動を制限したいなどというのはあまりに国民を舐めている。
むしろスイスのように国民投票を常習化し、政治家が独断で物事を決める機会を減らすことが必要だろう。国民を舐めた東京オリンピックを国民投票で止めさせることも出来たはずである。
結論
他にも言いたいことはあったのだが、現状重要なことにはすべて触れたのでここで筆を置く。量的緩和などもっと本格的な経済政策についてはこれまでの記事を参考にしてほしい。
面白いのは、名前に共産主義の入っている共産党が一貫して政府の権限を国民に戻そうとしており、「自由」と「民主」の自民党が一貫してその逆だということである。というか上の自民党の政策で、国民から搾取して票田にばらまくこと以外を目的とした政策が1つでもあっただろうか。
自民党の政策は世界の基準から見れば左派、リベラル派の政策にあたる。アメリカでは大きな政府を標榜するのがリベラル派の民主党、小さな政府を標榜するのが保守派の共和党である。
国民に人気のある河野氏が落選し、政治家の話を聞くのが得意な岸田氏が選ばれたのも、2016年に人気のバーニー・サンダース氏を落選させて不人気のヒラリー・クリントン氏を党代表に選出した民主党と完全に同じである。
そして自民党はそれでも票を入れてもらえると思っている。国民より政治家が大事だということなのである。
また、海外のリベラル派の妄言に騙されて脱炭素政策を進めているのも自民党である。無理矢理化石燃料を減少させた脱炭素政策は世界中でエネルギー価格を高騰させており、特にヨーロッパでは深刻な状態となっている。
そして同様にリベラル派の推進した難民政策という名の移民政策に乗ったのも自民党であり、当時反対した唯一の政党が共産党だった。
そろそろ日本国民は自民党が保守だというまったくの幻想から目覚めてはいかがか。自民党は完全にリベラル派であり、左派である。
そして共産党は実はかなりの保守なのである。共産党は筋金入りの資本主義者であるファンドマネージャーらが低成長の根本原因として批判している量的緩和にも反対している。
実際、自衛隊への攻撃を封印した共産党の政策は悪くない。経済政策だけ取り出せばマクロ経済学的に欠点がないくらいである。各党の政策がこの並びならば、立憲民主党などとは組まずに単独で過半数を取るべきだろう。