元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューでアメリカのインフレについてコメントしているので報じたい。
インフレ的なアメリカ経済
今回の話題は先日発表された9月分のCPI (消費者物価指数)である。
この結果について、一部の人々がCPIの全体の数字はインフレ的だったものの、「コア」の要素に絞ればそれほどでもなかった、と述べていることについてサマーズ氏は次のように批判した。
彼らはインフレは問題ないと言うために都合の良い指標を意図的に選んでいる。もう何ヶ月も彼らはそうしており、それをまたやったということだ。
注目すべきことにポール・クルーグマン(訳注:経済学者)もそれをまたやった。選別されたインフレ率とか中核インフレ率とか呼ばれ、チーム名「インフレは一時的」の人々が3ヶ月前に好んでいた、中心の構成要素だけを抜き出したインフレ指標は今回明らかに加速して大火事になっている。
「インフレは一時的」とはFed(連邦準備制度)のパウエル議長がアメリカでインフレが始まった時に何度も唱えた呪文のようなもので、根拠が一切ないことはこれまでも伝えてきた。
一方でそれに反論してインフレは一時的要因だけではないと主張してきたのがサマーズ氏である。Fedの対応が遅れたためにインフレは手が付けられなくなりつつあるとサマーズ氏は批判する。
これは中央銀行が債券市場に遅れを取ればどうなるかということの典型的な事例だ。供給が制限されている一部の品だけのインフレから、より広範囲なインフレへと移行しつつある。
数ヶ月前には一部の要素でだけインフレが見られた。これらの要素は少し落ち着いてきた一方で、今度は住宅や労働市場などインフレが幅広く見られるようになってきた。
お陰でアメリカ経済はスタグフレーションの匂いが漂っている。以下のように3月の現金給付以後、個人消費が横ばいで成長していないのに、インフレの気配が消えていないからである。
中央銀行の対応
こういう状況で中央銀行はどうすべきだろうか? サマーズ氏は次のように述べている。
中央銀行は今宣言しているよりも素早くテーパリング(量的緩和縮小)を行うべきだ。
だがもう一度言うがこれまでアメリカ経済を引っ張ってきた消費はほとんど横ばい、つまりゼロ成長となっている。GDPの内、消費以外の要素は消費よりも悪いので、アメリカ経済は来年にはマイナス成長になっている可能性がある。
インフレ率が高いにもかかわらず経済が成長していない場合、つまりスタグフレーションの場合における中央銀行の伝統的な選択は経済を犠牲にしてでもインフレを抑えるために金融引き締めを行うことである。
正統な経済学者であるサマーズ氏は当然ながらそれを進めている。しかしそれはアメリカ経済にも株式市場にも大いにダメージを与える選択となるだろう。サマーズ氏の以下の記事も参考にしてもらいたい。