ビル・グロス氏はJanus Capitalに所属するファンドマネージャーであり、最近ではドイツ国債の空売りや中国株の暴落を的確に言い当てたことで名高い。
彼は間違いなく、米国利上げ前の相場についてもっとも優れた理解をしている投資家の一人である。彼は債券投資家であり、株式の投資は専門外だが、彼はJanus CapitalのTwitterアカウントにおいて、自分が株式をトレードするならばどうするということを述べている。
このカジノのような市場をどうトレードするか? カジノのようにトレードすればいい。例えば、そうだ、株式市場は非常にボラティリティが高い。しかし、上方向はデフレ経済で、下方向はリフレ的な金融政策で囲いが付けられている。
この見方はここでわたしが説明してきた相場観とほとんど同じである。以下の記事を読んでほしい。
量的緩和で薬漬けにされた株式市場では短期的な合理性などとうに死んでしまったが、前回の記事で書いたように、方向性を失った米国株は、中長期的には、中央銀行のトリガーを引く地点まで行かなければ方向性を取り戻すことはできない。つまり、上がり過ぎて米国の急激な利上げを引き起こすか、下がり過ぎてどこかの中銀が追加緩和をしなければならなくなるかである。
あまりに同じで自分でも驚くほどである。以前の記事で彼と意見が一致した時にも述べたが、真似をしたわけではない。わたしの記事のほうが早いからである。
さて、ではこのような相場をどうトレードすれば良いか? レンジ相場を取引する方法は、当然こうである。彼は次のように述べる。
レンジのなかではボラティリティを買い、レンジの外ではボラティリティを売れば良い。レンジの上限と下限を間違えないように。幸運を祈る!
ボラティリティを買うとはオプションの買いであり、ボラティリティの売りとはオプションの売りである。彼はこれらの取引をややシニカルに語る。彼は当然このような取引はしないと言っているのだ。量的緩和で機能不全となったマーケットを彼は以前より馬鹿にしており、カジノのようなマーケットではまともな取引など存在しないと言っている。
しかしながら、彼は債券投資家であるが、ここはグローバル・マクロ戦略を議論する場である。マクロ的相場観からレンジが分かっているのであれば、われわれは当然それを取引する。グローバル・マクロに禁じ手はないからである。
では、レンジとは一体何処だろうか? 上限は、世界同時株安の前から述べている通り、今年の高値前後か、上がったとしてもその10%上までのラインである。このラインで既に空売りを仕込んだのは、ここで報告している通りである。グロス氏の言うようにコール・オプションの売りとしなかったのは、急落の可能性を考慮したからである。
では下限はどうか? 下限については以下の記事で説明した。グロス氏の言う通り、この記事で書いた下限とは、中銀が動く可能性のあるレンジである。
個人的にもこのような相場は馬鹿げていると考えている。馬鹿げているが、利益の可能性があるならばある程度の資金を賭ける。ただ、全力で資金を投入する時期ではない。そのような時期は終わってしまった。