ソロスファンドCEO、株式の利益確定を奨める

引き続きBloombergによるSoros Fund ManagementのCEOドーン・フィッツパトリック女史のインタビューである。今回は株式市場について語っている部分を紹介しよう。

Soros Fund Managementのポートフォリオ

フィッツパトリック氏はSoros Fund Managementのコロナ初期から今までのポートフォリオについて語る。

前回のインタビューでは2020年3月に50億ドルを直ちに投入したことを話した。

彼女がコロナ初期に金融市場が暴落した時に投げ売りされていた銘柄を底値買いしたことは有名である。

同じ時期にトレードしていたFed(連邦準備制度)のクラリダ副議長より上手くやったわけだ。

昨年3月に大きな資金を投入した後、Soros Fund Managementはどうしただろうか? 彼女は次のように語っている。

そしてそれから18ヶ月、われわれは再び現金の比率を徐々に上げてきた。だからもし次に経済危機が起これば、また同じように50億ドルをかなり素早く投入することが出来るだろう。

これは少し興味深い発言である。機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fでは、Soros Fund Managementの米国株買いポジション総額は微増となっていた。

ただ、Soros Fund Managementは未公開株も保有しており、フィッツパトリック氏はそちらを減らしたとも言っているから、合計ではポジションは減ってきているということなのだろう。

また、彼女が「次に経済危機が起これば」と言っていることも興味深い。恒大集団のことを念頭に置いているのだろうか。

株式市場のバリュエーション

現金保有を増やした理由として、フィッツパトリック氏は株式市場のバリュエーションが高いことをほのめかす。

今年最高のトレードの1つはボラティリティを売ることだった。実質金利がかなり深くマイナスになっている現状では市場に資金は溢れ行き場を失っており、社債の金利は国債の金利に近づいている。

このコメントには説明が必要かもしれない。市場に資金が溢れ行き場がない状態では、株価は高い位置にとどまり続けるので、ボラティリティ(上下動の激しさ)は小さくなり続ける。米国株のボラティリティ指数はコロナ後次のように推移している。

「ボラティリティを売る」とはこのボラティリティ指数の下落に賭けたり、オプションを売ったりすることである。

ボラティリティが低位で推移している時、基本的には株式が高い位置で推移していることを示している。上位安定すればするほど下落余地は大きくなるからだ。

フィッツパトリック氏は次のように続ける。

それでも株式を保有したいと思うなら、少し利益確定して現金の比率を増やしてもしもの時に動けるようにしておくのが良いだろう。

割安銘柄

ただ、聞き手にそれでも買える銘柄はあるかと聞かれ、フィッツパトリック氏は次のように答えている。

コロナからの経済回復に関連する銘柄はまだ安すぎると思う。こうした株は買われるべきだろう。

彼女は具体的な銘柄には言及しなかったが、回復関連株とは外食やホテル、遊園地、クルージングなどだろうか。彼女は次のように続けている。

これらの銘柄はコロナ以後上手くやることを学んだ。そしてアメリカの消費者は現金に溢れており、彼らは商品ではなく経験を渇望している。

アメリカで不動産価格が上昇している状況では、ホテルなどは安いと判断出来るのかもしれない。また、このままずっと家で篭りきりというわけには行かないのも、どの国も同じなのだろう。