ソロスファンドCEO: ビットコインはメインストリームの資産になった

引き続きBloombergによるSoros Fund ManagementのCEOドーン・フィッツパトリック女史のインタビューである。今回はテーパリング(量的緩和縮小)と暗号通貨について語っている部分を紹介したい。

インフレとテーパリング

前回の記事ではフィッツパトリック氏はインフレについて語っていた。

そしてこのインフレは供給不足という需要よりも供給の要因で起こっていると彼女は指摘していた。

この状況でテーパリングを行おうとしているFed(連邦準備制度)について彼女は次のように指摘する。

Fedは運が良い。アメリカの消費は調子が良いし、雇用は正しい方向に向かっている。だから次のFOMC会合でテーパリングが発表されるだろう。

優れたトレーディングセンスを持ったフィッツパトリック氏だが、彼女の上司であるジョージ・ソロス氏の専門だったマクロの見方では筆者は必ずしも彼女に同意しない。

例えば消費は本当に良いだろうか? 明らかに現金給付があるかないかで調子が激変しているアメリカの個人消費である。

しかしともかくFedはテーパリングに動いている。そしてフィッツパトリック氏によればその動きがドルへの信任をある程度回復させたという。

9月にゴールドが5%下がったことを考えれば、ドルの減価への懸念はある程度収まったのだろう。IMFの外貨準備においてもドルの地位低下は収まった。

金価格のチャートは次のように推移している。

ゴールドはドルの価値が下がる時に代わりに買われると一般に言われている。そのゴールドはテーパリングが話題になってから調子が悪い。テーパリングはドルの印刷を止めるということだからである。

金価格とテーパリングの関係については以下の記事を参考にしてもらいたい。

ドル下落懸念とビットコイン

一方で、テーパリングにもかかわらず調子の良い銘柄がある。暗号通貨である。

暗号通貨もインフレ、つまりドルの価値下落の懸念から買われていると言われていた。しかしテーパリング開始に向けて進んでいるにもかかわらずビットコイン価格は次のように推移している。

フィッツパトリック氏の今年の見事なトレードの1つが7月にビットコインを買い始めたことだった。

だから聞き手も気になったのだろう。テーパリングにもかかわらずビットコインが上昇していることについて聞かれ、彼女は次のように答えている。

そう、ビットコインは5万ドルだ。本当に興味深いのは、ビットコインが本当にインフレヘッジとしてだけ買われているのかということだ。

ビットコインはメインストリームの資産への境界を超えたのではないか。暗号通貨の市場規模はいまや2兆ドルを超えており、2億人のユーザがいる。だからビットコインは既にメインストリームの資産だ。

フィッツパトリック氏はビットコインがドルからの資金逃避という要因だけで買われているのではないという。最近の暗号通貨の値動きはゴールドより強いどころか、米国株が下がっている状況でも上がり続けている。以下は米国株のチャートである。

こうした状況は単なる余剰資金流入というだけでは説明出来ないだろう。

暗号通貨への投資

暗号通貨は広範囲に使われるようになれば政府に禁止されるという意見もある。

筆者もそれは正しいと思うが、まだまだその状況までは距離がある。

一方でフィッツパトリック氏は暗号通貨自体への投資よりもその周辺資産に投資することを推奨している。

暗号通貨自体もいくらか持っているが、それほどの量ではない。われわれの観点では一番面白いのは非中央集権金融などの使用例だ。

仮にビットコインなどの暗号通貨が政府に禁止されるにしても、政府運営の、あるいは政府に許可された暗号通貨が生き残ることは間違いないだろう。そうすれば暗号通貨を扱う企業などは生き残るということになる。フィッツパトリック氏はそちらに賭けているのである。