冗談みたいなタイトルだが、冗談ではない。中国では脱炭素政策によって電力供給の主力だった石炭発電が制限され、深刻な電力不足に陥っており、特に東北の地域では住宅でも工場でも停電に見舞われている。
停電でろうそくが人気に
紅星新聞によると、こうした状況下で中国の人々が買い漁っているのがろうそくである。中国のあるろうそくメーカーによれば、注文が一気に数十倍に増え、在庫がなくなったらしい。注文元は当然ながら停電が発生している地域である。
大変面白いのは、中国政府の「脱炭素」の掛け声のもとに火力発電を止めた結果人々がろうそくに走っているということだ。エコ推進の結果、中国の人々は無事に代替燃料を見つけたというわけである。日本でも菅氏や小泉氏が同じようなことをやろうとしていたが、日本はプラごみ同様に彼らの処分に困っている。
ちなみにこの話は笑い事ではない。世界第2位の経済大国に対して恒大集団のデフォルト懸念と同じタイミングで、しかも同じ原因によって降り掛かっている経済危機だからである。
中国政府の自滅政策
中国のGDP2%分の負債を抱えた不動産ディベロッパーである恒大集団が倒産しかかっているのは、習近平氏率いる中国政府が不動産の融資などの規制を強化したからである。不動産バブル自体は必ずしも中国政府が作り出したわけではないが、崩壊のトリガーを引いたのは中国政府自身である。
バブルを野放しにしないこと自体には経済的意義があるにしても、中国政府には最近自国産業を破壊するような行動が多い。私企業による学習塾運営を禁じたり、未成年のゲームを1日90分に制限してゲーム業界の株価を暴落させるなど、折角成長してきた中国経済をわざと壊すような振る舞いが多く理解に苦しむ。投資家のジム・ロジャーズ氏も同じことを言っていた。
欧米ではこれを中国の独裁政治の表れだと見なしているが、彼らも例えば地球温暖化対策を中央銀行に強いるという意味不明の方針を他国にも強要するなど、かなり良い線を行っている。実は彼らはよく似ているのではないか。
金融市場への影響
投資家としてはこうした状況をどう解釈すれば良いか。先ず、中国政府の意図はどうあれ、彼らはこれらの政策を実行することに関してどうやら本気らしいということである。これは恒大集団が救済される可能性が低いことを意味する。そして電力不足や不動産市場の不振を中心とする中国の経済危機は今後も続いてゆくだろう。
そしてもう1つは、恒大集団の危機は恐らくかなり取り返しの付かないところまで行っているということである。経済学者ラリー・サマーズ氏はこう言っていた。
中国で何が起きているのかについて完全な情報を持っている人は誰もいない。少なくともわたしは持っていない。そしてわたしの金融における経験で言えば、まだ知られていない情報は通常知られている情報よりも悪い。
そもそもこうした危機が世界のニュースになっているということ自体、本来中国政府にとって好ましくない状況である。中国の不動産バブルは何年も前から知られていたが、ここに来て表立った混乱になったということは、恐らく中国政府にはもうどうしようもない状況まで中国の不動産業界は来てしまっているということだろう。
電力不足についても同様のことが言える。中国政府の脱炭素政策もそうだが、コロナ後にエネルギー価格が世界的に上昇しているというのも原因の1つだろう。以下は原油価格のチャートである。
エネルギーが不足し、工場が止まり、物品が不足して経済全体的なインフレになる。そこにコロナによる工場停止も加わって不景気とインフレが一緒に来る。それがサマーズ氏の主張するスタグフレーションである。
実際には、こうした危機により株価が下がればデフレになる可能性もある。しかし以下の記事で述べたように、インフレになるかデフレになるかは大した問題ではない。どちらにせよインフレを差し引いた実質経済成長率は悪くなるということが経済にとっての問題なのである。
世界第2位の経済大国の経済危機は世界経済に大きな影響を及ぼすだろう。これからも中国経済のニュースを届けてゆく。