アメリカの個人消費、現金給付後4ヶ月連続でほぼ横ばい

恒大集団のデフォルト危機で中国のことばかり報じているが、米国経済の状況も確認しておこう。

横ばい続くアメリカ個人消費

8月分の実質個人消費のデータが発表された。数字としては前月比年率で5.2%の上昇となっているが、グラフを見なければ実情は分かりづらいだろう。グラフはこうなっている。

これがどういう状況か、ここの読者なら説明不要かもしれない。まず2021年に入ってすぐの急上昇は3月の現金給付後の消費増である。アメリカでは3回行われた現金給付が消費を確実に押し上げていることが分かる。

しかしその後はどうだろうか。現金給付はその後行われていない。そして3月以降個人消費がどうなっているかと言えば、4月から8月までほとんど横ばいで成長していないのである。

現金給付なしでは成長しないアメリカ経済

これはアメリカ経済のどういう状況を表しているだろうか。

GDPは消費、投資、政府支出、輸出入の4つの要素で構成される。第2四半期のGDPのデータを見てもらえば分かるように、この内消費以外の3つの要素はそもそもあまり振るっていない。

そして頼みの綱の個人消費がどうなっているかと言えば、現金給付がなくなった途端に成長から横ばいに転換しているのである。

個人消費さえ横ばいという状況が続けば、他の要素はもっと悪いだろうから、アメリカ経済は来年には景気後退に陥る可能性が高い。

波乱の2022年

2022年はアメリカ経済にとって波乱の年となるだろう。ここに降りかかるのが中国の恒大集団のデフォルト危機である。

また別途記事を書くが、恒大集団がいつデフォルトするか、あるいはデフォルトするかどうかはもはや問題ではない。形式上の形はどうあれ、中国はもはや不動産バブルに根ざした経済成長を続けることは出来ない。

しかしサブプライムローン危機において不動産価格の下落が1年かかったように、中国においても恒大集団が中国のGDP1%分以上と推定される手持ちの不動産を投げ売りして不動産市場が暴落し、不動産をメインの投資に据えて資産形成してきた多くの中国人の消費が減り、それが世界経済にも影響を及ぼすまで1年ほどかかると推定される。

この猶予が世界経済にとって良いかどうかは微妙である。この危機がすぐに起きるものではないために、アメリカの中央銀行はこの最悪のタイミングでテーパリング(量的緩和縮小)と利上げを行おうとしている。

現金給付後の景気減速、恒大集団のデフォルト危機、そして金融引き締めが合わされば、2022年のアメリカ経済はかなり悪い状況になるに違いない。

アメリカでは11月に中間選挙があるため、アフガニスタンの件で支持を失っているバイデン大統領はなりふり構わず追加緩和を行うだろう。

そしてレイ・ダリオ氏らの言う通り、中央銀行もテーパリングや利上げを撤回しフルの金融緩和を行うことになる。

結論

これまでも散々述べてきたシナリオではあるが、経済指標を見る限りアメリカ経済はそのままそのシナリオに向かって突き進んでゆきそうである。2022年に向けての経済墜落、そしてそこからの緩和再開である。しかしその緩和は経済成長よりもインフレを押し上げるだろう。

レイ・ダリオ氏はアメリカが沈んで中国が覇権を握ると言っていたが、この調子だと共倒れになりそうだ。今後も2大国の没落の様子を伝えてゆく。