中国地方政府が恒大集団の一部資金を差し押さえ

中国最大級の不動産ディベロッパーである恒大集団は、中国のGDP2%分の負債を抱えてデフォルトの危機に瀕しており、破綻を回避するためには中国政府による救済が必要となりそうな事態になっているため、中国政府がどう対応するのかが金融市場の注目の的になっていたが、1つの答えが出たようである。

中国政府の対応

これまでにも報じているが、恒大集団の問題は中国の不動産市場全体の問題である。恒大集団が倒産すれば、残されたGDP2%分の債務を返せるだけ返すため、GDP1%分程度と推測される手持ちの不動産を投げ売りすることになる。

当然ながら、そうなれば中国の不動産市場には強力な下落圧力がかかることになり、不動産を中心に資本形成している中国人の消費活動に大きな影響を与えることになるだろう。

そこで中国政府が恒大集団を救済するのかどうかが焦点となっていたが、中国政府は直接的には沈黙を守ったままである。しかし中国共産党傘下のタブロイド紙環球時報は次のように述べていた。

恒大集団は『大きすぎて潰せない』の原則に基づく政府による救済を期待すべきではない

そして24日にWall Street Journalが報じたところによると、中国当局は地方政府に対して恒大集団の破綻に備えるよう指示がされたという。「想定される嵐に備える」ように言われたとのことで、渦中の人である恒大集団主席と同じく詩的な表現である。

恒大集団を抑えにかかる地方政府

さて、Financial Timesが報じたところによると、地方政府は中央政府に言われたとおりに職務を実行しているようだ。

報道によれば、中国の珠海と広州でそれぞれの地域を管轄する地方政府は、恒大集団の子会社に対し、顧客が支払った前払い金などの資金を別の用途に転用することが出来ないように政府管理の銀行口座へ移管することを命じたという。

恒大集団は23日に期限が来ていた金利の支払いについて一部債権者との合意に達し、一部は支払わなかったものとみられる。借金を手持ちの不動産で返すと主張して投資家とトラブルになっているとの報道も見受けられる。恒大集団の株価は23日に利払いをするかのような恒大集団の発言を受けて一時舞い上がったが、その後すぐに沈んでいる。

詩的な表現で従業員に語りかける主席も主席なら、投資家も情緒不安定である。こういうブラフに騙されてはならない。

さて、そのような中で物件の前払い金などを支払った顧客は物件が引き渡されるのか、引き渡されないとすれば前払い金が戻ってくるのかを心配しており、地方政府はそうした資金を恒大集団が利払いや借金返済に勝手に使わないよう差し押さえたということである。

顧客の悲劇

Wall Street Journalには代金を支払ったものの物件が完成していない顧客の声が載っている。「この物件には人生分の貯金を注ぎ込んだ、物件が完成しなければわたしの人生は終わりだ」とのことである。

繰り返しになるが、中国人の多くは不動産投資を神聖視しており、良い不動産を買うことに人生を賭ける人も少なくない。だからこそ恒大集団の破綻がもたらす不動産価格下落を甘く見てはならないのである。中国人にとっての不動産下落は、アメリカ人にとっての株価下落かそれ以上だろう。

また、政府の管理下となった口座に彼の支払いは見当たらなかったといい、「わたしのお金が何処に消えたのか分からない」と述べている。倒産する会社と取引をするとこういう憂き目にあってしまう。

23日に恒大集団が利払いを払うか払わないかで右往左往していた投資家はこうした事実を考えるべきだっただろう。実際に恒大集団から資金が返ってこない顧客や投資家が多数存在している。事態はもはや利払いがどうなるかという次元を超えているのである。

結論

だから恒大集団がデフォルトを逃れるためには政府の救済しかないだろう。そして上記の情報をつなぎ合わせれば、中国政府はやはり恒大集団を救済しないつもりでいるらしい。投資家は恒大集団のブラフに惑わされていないで、その後の帰結を考えるべきである。

金融市場への影響については以下の記事で説明しているので、そちらを参考にしてほしい。引き続き恒大集団関連のニュースを伝えてゆく。