アメリカの中央銀行であるFedは9月21日から22日まで金融政策決定会合であるFOMC会合を開き、金融政策の現状維持を決定した。論点となっていたテーパリング(量的緩和縮小)については発表を見送った。
テーパリング発表見送り
結局テーパリング発表はなかった。パウエル議長がテーパリングの早期開始を渋っていたにもかかわらず、何人かの連銀総裁がパウエル氏を無視して早期開始を支持、パウエル氏も年内の開始発表を慌てて支持して足並みを合わせるという事態になっていた。
一部の総裁らは今回の会合での発表を支持していたが、雇用統計など弱い経済データが発表されると9月発表を支持していた1人であるセントルイス連銀総裁が支持を撤回した。
そこに恒大集団のデフォルト危機が加わり、テーパリング発表は次回11月に持ち越されるだろうというのがここまでの流れである。
そして事実そうなった。会合後に発表された声明文は、前回のものとほぼ変わりがないが、テーパリングの早期開始を示唆する文面が入れられている。
経済状況の進展がこのまま広範囲に及べば、資産買い入れのペースを緩めることが近く正当化されるだろう。
ということで事前の予想通りのFOMC会合だったということである。
利上げへの下準備
また、今回の会合では会合参加者の今後の政策金利の予想値をプロットしたドットプロットも発表されており、来年の利上げを支持する委員の数が増えていることが示されている。
このままテーパリングが上手く行けば利上げへのトーンも上げていき、来年には利上げをしようという魂胆なのだろう。
しかしそこには恐らく中国恒大集団の問題が絡んでくる。パウエル氏は会合後の記者会見でこの問題についてもコメントしている。彼は次のように答え、アメリカ経済への影響を暗に否定した。
恒大集団は新興国経済にとって非常に大きな負債を抱えている中国の問題だ。
アメリカでは企業のデフォルトは今非常に少ない。
アメリカにとって問題はないそうである。
しかしFedはリーマンショックの時も同じことを言っていたし、パウエル氏は自分の引き起こした2018年世界同時株安についてさえ同じことを言っていた。
ちなみに日銀の黒田総裁も恒大集団の問題について全く同じことを言っている。
結論
こうした人々は影響がないから影響がないと言っているのではない。影響が自分で計測できないから直ちに影響がないということにしているのである。もう少し後ならば自分にも影響が見えてくるかもしれないという意味に過ぎない。一方で見える人には最初から見えている。
コロナ初期に「人対人での感染の証拠はない」と言っていた中国政府、「ワクチン接種後の死とワクチンとの因果関係は証明されていない」と言っている当局、そして恒大集団に投資して96億を失ったGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の「直ちに影響はない」は、自分の役職が身に余っている人は皆同じことを言うということを示している。
こうした発言は事実について喋っているように見えながら実際には問題自体については何も語っておらず、発言者が何も知らないという事実しか明らかにしていないのである。
ここでは先週の段階で恒大集団関連の銘柄を空売り対象として上げていたが、うかつにもGPIFの名前を挙げるのを忘れてしまった。今回最大の失敗だろう。