週明けの株式市場は予想通りの展開となった。中国の大手不動産ディベロッパー、恒大集団の倒産危機で月曜日の米国市場と火曜日の日本市場はともに大幅安となった。
先に逃げ出す役員
恒大集団は中国最大級の不動産会社であり、中国のGDPのおよそ2%に相当する2兆元の負債を抱えて破綻しかかっている。
詳細については既に十分な記事を書いている。
しかし状況は常に進行している。まず、一般の投資家よりも先に自社の投資商品の資金返却を受けていた恒大集団の役員6人が処分された。
沈みゆく舟が本当に沈むのかどうかを知りたければ、その舟に乗っている人に聞くのが一番である。やはり内部の人間は前もってもう駄目だと思っていたらしい。恒大集団の株価は下がりすぎてここ数日の値動きが分かりにくいほどになっている。対数チャートを使うべきだろうか。
これまでの報道によれば、やはり中国共産党は恒大集団を救済しないつもりのようだ。20日に期限が来た債務は支払われず、23日のものも支払いは絶望的のようである。デフォルト確定までまだ時間はあるが、今月中の破綻もやはり有り得るだろう。
そうなれば恒大集団は中国のGDP1%規模の手持ちの不動産をすべて投げ売りして借金を返済することを強いられる。恒大集団が破綻しても大きな影響はないだろうと呑気に構えている投資家も多いが、何十年もバブルを続けてきた中国の不動産市場にGDP1%の売り圧力がかかればどうなるのかについては誰も説明していない。
大半の投資家はものを考えない生き物なのである。しかし他人が考えない時に素早く頭を働かせた投資家だけが利益を得ることが出来る。
そこでここでは恒大集団の倒産で直接の影響を受ける銘柄について前もって説明しておいた。
関連銘柄の推移
そうした銘柄はどうなっているだろうか? 前もってこの問題を消化していた香港市場では、恒大集団以外の銘柄は比較的落ち着いている。例えば同じく不動産の長江実業の株価は今日はそれほど下落していない。
一方で恒大集団の問題をほとんど意識していなかったアメリカや日本の市場では影響が大きかったようである。上の記事で関連銘柄として挙げた、ショベルなどの建設機械を生産するアメリカのCatapillarの株価は次のようになっている。
同業で日本企業のコマツも同じように下落している。
不動産が供給過剰に陥っているために不動産が売れなくなり、恒大集団が破綻するのであれば、当然ながら建物はこれから建てられなくなり、ショベルは中国で使われなくなる。
しかし上の記事で述べた通り、日本やアメリカで真っ先に中国関連銘柄として上がるこれらの銘柄の中国の建設業への依存度は実は10%に満たない。
一方で建設に使われる原料である鉄鉱石や銅については、世界の輸入に占める中国の割合が鉄鉱石が75%、銅が43%とかなり大きいことを挙げておいた。
これらの銘柄は中国の不動産バブルとともに価格が上昇してきた本命中の本命である。中国の不動産バブルが崩壊すれば、価格の下落は避けられないだろう。鉄鉱石の採掘企業を集めたVanEck Steel ETFは次のように推移している。
銅価格は次のように推移している。
個人的な感想を言えば、まだまだだろう。
そして最後に人民元である。日本やアメリカとは違い中国人の資産形成の中核を担っているのは株式ではなく不動産であるため、不動産市場の暴落は中国の消費が冷え込むことを意味する。そうなれば金融緩和は避けられず、人民元は下落するだろう。
ドル元のチャートを掲載しておこう。上方向がドル高人民元安である。
結論
週明けの市場の動きとしては先週の内に書いておいた記事の通りの結果となってはいる。
しかし問題の規模を考えれば市場はこのニュースを全然消化していない。本番はこれからである。ジョージ・ソロス氏の見解も参考にされたい。
また、差し当たっては関連しそうな銘柄がとりあえず全部売られている様相だが、ここからは徐々に選別され特に影響を受ける銘柄が特に大きく下落してゆくことになるだろう。繰り返しになるが筆者が本命と考えているのは鉄鉱石、銅、人民元である。
また、世界的なリスクオフとなればドル円や米国債でポジションを取ることが投資家を助けてくれるはずである。
引き続き恒大集団と中国の不動産業界のニュースを報じてゆく。