アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は今月21日から22日までFOMC会合を開き金融政策を決定するが、以前この会合でテーパリング(量的緩和縮小)を発表すべきだと主張していたセントルイス連銀総裁のブラード氏が、弱い雇用統計を受けて今月のテーパリング発表への支持を弱めるかのような発言をしている。
弱気になるタカ派
テーパリングの年内開始を支持する連銀総裁は多いが、今月の発表を支持していたのはセントルイス連銀総裁のブラード氏とダラス連銀総裁のカプラン氏だった。
しかしそこに飛んできたのが弱い雇用統計のニュースである。
これまで何度も述べてきたように、今年後半は短期的なインフレ減速の相場である。それが雇用統計にも表れたことになる。
このニュースを受けてタカ派の連銀総裁たちがどう動くかが注目されていた。上記の2人のうち、カプラン氏は経済成長率の予想値を下方修正したものの、テーパリングの10月開始(9月発表)を依然支持すると述べた。
しかし態度を変えたのがもう1人のブラード氏である。ブラード氏は雇用統計の前までは次のように述べていた。
テーパリングを来年3月までに終わらせるべきだ。
3月に終わらせるためには、やはり9月の会合で発表しなければならない。しかし雇用統計を受けた後のインタビューでは次のように述べている。
テーパリングは今年中に開始し来年の前半の何処かのタイミングで終了すべきだ。
「来年3月」が「来年の前半」にさらりと置き換えられている。来年の前半にテーパリングを終わらせるということは、開始は年末でも良いということになる。弱い雇用統計を受け、明らかに態度を軟化させているのが見て取れる。
結論
雇用統計以上に重要なのはもうすぐ発表されるCPI(消費者物価指数)、つまりインフレ率のデータである。インフレがどうなっているのかということが当然ながら失業率や労働者の総数よりも優先する。
短期デフレシナリオに従うならば、このインフレ率の数字もデフレ的になっているはずである。そしてその場合、テーパリングはどうなるか? 今や今月のテーパリング発表を明示的に支持しているのはカプラン氏だけとなり、他の委員たちは今年中の開始を支持しているため、恐らく今月のテーパリング発表はないだろう。
ということで短期デフレ相場(つまり緩和相場)がもう少し続きそうである。これまで述べた通り、それは緩和に敏感な銘柄、例えばゴールドや暗号通貨、ハイテク株などのパフォーマンスに影響する。日本株もその範疇に入るだろう。詳しくは以下の記事を参考にしてもらいたい。