9月10日に8月分のアメリカのPPI(卸売物価指数)が公開され、前月比年率で9.2%のインフレとなり、前回の15.1%から急減速した。言うまでもないが、インフレ減速の兆しと解釈すべき数字である。
しかしロイターなどは前年同月比の8.3%という数字を挙げた上で次のように報じている。
比較可能な2010年11月以降で最大の伸びを記録し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が引き続きサプライチェーン(供給網)を圧迫する中、高インフレが当面続く公算が大きいことを示唆した。
コロナで減速した前年と比べて高い数字になるのは当然であり、繰り返しになるがコロナ後の経済統計は前月比年率で見なければならない。大手メディアの言うことを真に受けて経済を眺めると、ここの解釈と全く違うことになってしまう。
CPIに遅れて減速するPPI
さて、まずはPPIのチャートから見てみよう。
徐々に傾斜がなだらかになっているのが分かるだろうか。
原因は何だろうか。CPI(消費者物価指数)が消費者の動向に左右されやすい一方で、PPIは金融市場のコモディティ価格に左右されやすい。
金融市場においてインフレ懸念で真っ先に上がるのが金属や農作物などのコモディティである。筆者を含めて今年前半のコモディティ価格上昇で儲けた投資家は多かった。
しかしその後インフレ懸念は一時後退している。ここまで物価を引っ張ってきたのはアメリカでは3回も行われた現金給付であり、その現金給付は今年の3月を最後に打ち止めとなっているからである。
現金給付後の短期デフレ相場
それでここ数ヶ月はインフレ相場が一旦休止していた。ここではそれを短期デフレ相場と呼んでいる。コモディティなどインフレで上がったものが下がり、ハイテク株などインフレで下がったものが上がる相場だと言い続けてきた。
それでコモディティ価格は結局どうなっているのか? 以下はインフレ相場で一番上がった銅価格のチャートである。
5月で頭打ちとなっている。
原油価格はOPECが増産を渋ったため7月までは上がっていたが、やはりその後は芳しくない。
農作物を代表して大豆を上げておくが、大豆などはもうかなり下がっている。
読者は知っての通り今年前半はかなりコモディティに強気だった筆者だが、デフレ相場にシフトしたのは正解だったようである。
結論
コモディティ市場におけるこうしたトレンドがようやくPPIにも表れ始めたということである。よって最初に掲載したロイターの解釈は完全に間違っている。
一方で大豆などかなり下がっているコモディティ銘柄が増えてきたのは事実であり、こうしたデフレ相場に前もってシフトしたのと同じように、そろそろコモディティ市場に再参入するタイミングを計り始める時期だと考えている。
インフレが今後どうなるかということについては以下の記事で書いている。
この記事では今後の2つのシナリオを説明したが、どちらのシナリオにおいても最終的にはインフレになる。このままインフレが続く場合はそのままインフレになり、一旦デフレになる場合も実体経済が物価以上に沈むため、現金給付などの追加刺激が必要となり結局インフレになる。
短期デフレ相場はまだもう少し続くと考えているが、他の投資家の先を行かなければ投資家は儲けられない。大豆など現在下落しているコモディティ銘柄をチェックリストに加え、買いに入るタイミングを考えておくべきだろう。