米国利上げに関する著名ファンドマネージャーたちの見解

米国の利上げについてはここでも様々記事を書いてきたが、9月16-17日のFed(連邦準備制度)のFOMC会合を間近に控え、著名投資家たちも自身の意見を表明しているので、これらを纏めてレビューしておこう。

ジム・ロジャーズ氏

先ずはYahoo! Financeのインタビューに答えているジム・ロジャーズ氏からである。彼は利上げ後の市場については弱気派であり、Fedは金融政策を逆戻しする羽目になると主張する。

Fedは早ければ今週か、遅くとも今年中には利上げを行うことになるだろう。だが、彼らは学者や官僚の集まりであり、これから何が起こるのか何も分かっておらず、市場の後手に回ることになる。金利が上昇し、市場は下落し始める。そうなればFedはどうするだろう? 彼らはただパニックに陥り、市場を救おうとするだろう。

これは、利上げの後に市場が暴落し、Fedは再び金融緩和に戻らざるを得なくなるという主張である。彼は何度目の利上げで市場が暴落するかは言及していないし、短期の予想は彼の得手ではないのだが、上記の事態がいずれ起こるということである。

Fedが学者の集まりで、市場の動きを理解していないというのはその通りなのだろう。以下の記事で説明したバーナンキ氏の金利理論は経済学的には正しい。しかし市場の動きを考慮しなければ、理論通りに金融政策を進めることはできないのである。

また、Fedは金融緩和に逆戻りするときには、金価格が反発することになるだろう。以下の記事でも紹介した通り、そこまでのシナリオは彼にとって既定路線である。

金価格については以下の記事で詳しく説明してある。

ジェフリー・ガントラック氏

次に、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガントラック氏はETF.comのインタビューにて、米国が利上げをしても長期金利は上がらないと主張している。彼は世界経済の景気に対して弱気であり、以下のように述べている。

Fedは利上げをすべきファンダメンタルズ上の理由を持ち合わせていないが、長年ゼロ金利を続けていることに非常に不安になっているのだ。

雇用統計や経済成長が利上げの口実に過ぎないということは、ここでも述べてきた通りである。ガントラック氏は世界経済に関して弱気である理由を以下のように説明している。

中国が彼らの望み通り7.5%から8%の経済成長を達成していないとすればどうなる? もし2%か、あるいは0%だとしたら? われわれは、世界経済の成長率が良くて1%だという結論に達した。これは非常に低い数字だ。平均で1%であれば、かなりの数の国の経済がリセッションだということを意味する。

そして世界中が景気後退であれば、債券は買われ、金利は低くなる。これまでの記事で、長期金利の上昇が量的緩和バブル崩壊の前兆だと書いてきたが、景気後退という要素が入れば、金利が上昇せずとも株式が下落することが有り得る。その場合は市場からサインを読み取ることがより難しくなるだろう。

ビル・グロス氏

最後に紹介するのは、著名債券投資家のビル・グロス氏の見解である。彼は利上げについて、Twitterで以下のようにコメントしている。

村を救うために、その村を壊してしまおうというのか? Fedは次の景気後退のときに利下げをする余地を作るためだけに今利上げを行おうとしている。非論理的だ。

彼は恐らく、今回の利上げの本質を一番よく分かっている投資家である。Fedの金融引き締めの手順は量的緩和を行っていた頃から計画されていたことであり、グロス氏はそのFedの意図を察した上でそれが間違いであると主張している。

利下げの余地を作るために利上げをするとはどういうことか、Fedが何を目指しているのかについては、以下の記事で詳しく説明しておいたので、そちらを読んでほしい。

今回のFOMC会合の結果がどうなろうとも、ここから数ヶ月、市場は不可解な動きをするかもしれない。しかし、忘れてはならないのは中長期的な相場観である。ドル円はどうなるのか? 株式は下がれば買いなのか? 金はいつ買えば良いのか? これらの問いについては、以下の記事で答えておいた。短期的な値動きに惑わされず、自分の投資戦略をしっかり実行に移すことが必要である。