DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が既に高止まりしているアメリカのインフレ率が更に上がると主張している。Yahoo! Financeが伝えている。
アメリカのインフレ
コロナ禍でアメリカでは膨大な現金給付が行われ、アメリカでは物価が上がっているが、現在のところ短期的な減速状態にある。
3月の現金給付の短期的影響が剥がれつつあるからである。この傾向は数ヶ月続くだろう。
減速するインフレ率にもかかわらず、ガンドラック氏はインフレ予想を崩していない。また、あるいはインフレが減速するならば経済成長率はもっと減速するだろうというのがガンドラック氏の予想である。
ガンドラック氏はコロナ対策として政府によって行われている失業保険の拡充を批判している。
何処へ行ってどんな職業の人に聞いても、労働者を確保するのが難しいと言う。当然だ。みな失業することによって給料かそれ以上のお金を得ているのだから。政府がそれを支援している。
失業保険が手厚すぎるのである。そしてアメリカ経済にとってもう1つの急所が立ち退き猶予である。
アメリカの立ち退き猶予
現在、アメリカでは家賃を払えない人々に対する立ち退き要請が一部禁止されている。つまり、借り主が家賃を払えない場合にも家主が立ち退き要請を行うことが出来ない。
しかも奇妙なことに、この禁止を行なっているのがCDC(米国疾病対策センター)である。日本で言えば、尾身会長率いるコロナ分科会が家主の財産権を制限したようなものである。
実はこの命令には法的根拠がなく裁判所も合法性を疑問視しているが、裁判所はバイデン大統領からの黙認要請を受けて禁止を継続させている。
当然ながら家主からは猛反発を受けており、訴訟も行われているが裁判所はバイデン氏の言いなりである。日経新聞には「Housing is a human right(居住は人権)」と書かれた紙を持ったデモの人々の写真が掲載されている。アメリカ民主党は基本的に、自分では何もしないが自分の権利だけは要求する人々で出来ている。
さて、この状況が経済にとって何を意味するか? ガンドラック氏は次のように述べている。
景気刺激策や立ち退き猶予が終わる時、経済には途方もない歪みが生じることになる。立ち退き猶予が終わる時にはあらゆる結果が生じるだろう。家賃は高騰する。
アメリカの住宅市場はもう既にバブル状態である。
しかしガンドラック氏によれば、立ち退き猶予が終わればここから更に家賃の高騰が始まる。賃金を払わない借り主が立ち退いて、払える借り主が入ってくるからである。
それは当然ながらインフレを押し上げる。一方で、失業保険の拡充が終われば人々は仕事に戻るだろうが、アメリカ全体の限られた賃金の量をより多くの人々で奪い合うことになる。失業者の数は減るが、限られたパイを奪い合うようになるため消費が減ってデフレになるだろう。
結論
現在、アメリカ経済には相反するように見える2つの力が働いている。1つはインフレ圧力であり、もう1つはデフレと景気後退の圧力である。
これらは一見相反しているように見える。その結果が一時的に減速しているインフレ率である。
しかしこの2つの圧力には1つ共通することがある。両方とも経済にとってはマイナスであるということである。
GDP速報でも報じた通り、刺激策によって数字の上では絶好調に見えるアメリカ経済は実際にはかなり危うい状況にある。刺激策がなくなればかなりのスピードで空中分解することになるだろう。
ガンドラック氏は次のように述べている。
政府は虎の尾を掴んでいる。だから今のところは引っかかれたり襲われたりはしていない。しかしひとたび虎の尾を離せば、間違いなく襲われるだろう。それが起きようとしている。