来年2月に任期終了を迎えるFed(連邦準備制度)のジェローム・パウエル議長の再任をジャネット・イエレン財務長官が支持した。Bloombergが伝えている。
パウエル議長の任期終了
2018年にトランプ前大統領に任命されたパウエル議長は2022年2月に任期終了を迎える。このことが市場では少しずつ話題となっていた。
アメリカの金融政策を司るFedの議長は大統領が任命する。そして誰が議長を務めるかということで金融市場の行く末が大きく左右されるため、パウエル氏が再任されるのか、それとも別の誰かになるのかということを投資家は噂し始めていた時期だったのである。
そこで財務長官のイエレン氏がパウエル氏の再任を支持した。バイデン大統領自身の決断はまだ報じられていないが、恐らくそのままパウエル氏の再任で決まるのではないか。
自分自身パウエル氏の前にFedの議長を務めていたイエレン氏は、当時からのここの読者には馴染みのある名前だろう。イエレン氏としてはパウエル氏以外の人物を推薦し、自分の古巣に政府側の立場から個人的影響を与えるというのはやりにくかっただろうから、彼女がパウエル氏の再任を支持したのは自然の成り行きと言える。
一方で投資家にとってパウエル氏の再任はどういう意味を持つだろうか? 恐らくは、相場が読みやすくなったというのが妥当な表現なのだろう。
パウエル議長の業績
これまでのパウエル氏の業績はどうだっただろうか。思い返せば、就任の段階でわたしはパウエル氏の手腕に疑問を呈していた。何故ならば、彼は金融政策を決定するFOMC会合の場で、自分の友人の投資家たちが市場に強気か弱気かを根拠に金融政策を決めようとしていたからである。
当時の記事に以下のように書いたのを思い出してほしい。
わたしが言いたいのは、パウエル氏の友人の意見がアメリカという国の金融政策にそれほど重要なのであれば、その友人を議長にしてしまえばいいということである。パウエル氏は他人の意見を会議に持ってくるだけではなく、自分の頭で考える必要がある。
この人大丈夫か、と当時は思っていた。そしてその後、筆者を含む一部の投資家が警鐘を鳴らし続けたにもかかわらず利上げと量的引き締めを継続し、見事株式市場を大暴落させた。
やはりこの人は大丈夫ではなかった。その後、周りの意見を信じてタカ派だったパウエル氏は、株価を暴落させたトラウマから究極のハト派に転向した。そして今では投資家たちから逆の方向で批判されている。
彼はどちらに転んでも正しい選択を選べないのだろう。
現在パウエル氏はFedの委員の多くがインフレを懸念しテーパリング(量的緩和縮小)を支持している中で、インフレの脅威を認めていない。恐らくは金融緩和の撤回を出来るだけ引き伸ばしたいと考えているのだろう。
結論
こうしたパウエル議長の再任がアメリカ国民にとって良いことなのかどうかは分からない。経済学者で元財務長官のラリー・サマーズ氏は、量的緩和を出来るだけ早く停止するよう求めている。
しかしパウエル氏は耳を貸さず、タカ派で行き過ぎた2018年とは逆の方向に行き過ぎる結末を迎えるだろう。その結末とはドル安かインフレ、あるいはその両方である。
2018年の大惨事と同じ状況を彼はきっと再現してくれる。そして残念ながら、投資家にとってはそれは最大の儲け時なのである。
投資家の仕事は中央銀行の失策を市場で正すことである。パウエル氏が間違い続ける以上、それくらいしか出来ることがないのである。