前回に引き続き機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。前回はレイ・ダリオ氏率いるBridgewaterが米国株を買い増したことを報じた。
そして興味深いことにヘッジファンド業界の大御所であるジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementも米国株を買い増しているので今回はそちらを報じたい。
ソロス氏の米国株買い増し
レイ・ダリオ氏の米国株買い増しは大幅なものだった。ソロス氏はダリオ氏ほどではないが、Form 13Fに報告されているSoros Fund Managementの米国株買いポジションの総額は53億ドルから59億ドルへと確かに増額されている。
その中でも目立つのがハイテク株の買い増しである。Amazon.comの買いは2.1億ドルから3.3億ドルへと増額されている。
これとは別に株式5,000万ドル分のコール・オプションも購入しており、結構な力の入れようだがAmazon.comは決算発表後急落している。
今回のForm 13Fは6月末のものなので、決算発表前のポジションということになる。しかし前回3月末からの保有分も考えれば恐らくプラスになってはいるのだろう。
次に大きいハイテク株ポジションはGoogleの親会社Alphabetで、1.4億ドルから1.7億ドルに増額されている。
こちらは文句なしに上昇トレンドである。
また、Nasdaq 100と連動するInvesco QQQ ETFにも多額の投資をしており、3.5億ドルから3.9億ドルに増額されている。
何故ハイテク株か
Soros Fund Managementは他にも規模の大きいポジションを持ってはいるが、特定のカテゴリーの銘柄群をまとめて保有しているのはハイテク株だけである。
何故今ハイテク銘柄かと言えば、ダリオ氏と同じくやはり金利低下を予想したのだろう。アメリカの長期金利のチャートをもう一度載せておこう。
金利低下の恩恵を受ける銘柄はいくつかある。ダリオ氏は高配当株を選び、ソロス氏はハイテク株を選んだ。しかし金利低下を睨んでいたという点では同じだったのだろう。
こうしてみればダリオ氏、ソロス氏、そして債券投資家のスコット・マイナード氏の大御所たちはすべて金利低下を予想していたということになる。ソロス氏もダリオ氏と同じくこの状況で米国株を買い増していることから、金利低下を受けた株高シナリオを予想しているのだろう。よって株安シナリオを予想しているのは、3人の中ではマイナード氏のみということになる。
しかし去年と今年、奇抜な予想を立て続けに当て続けているのもマイナード氏である。米国株の今後の展開に期待したい。
ビットコイン
さて、あとはForm 13Fには出ていないがSoros Fund Managementの興味深いポジションといえば暗号通貨関連である。
7月にはCIOのドーン・フィッツパトリック女史が中心となってSoros Fund Managementがビットコインをトレードしていたことを報じた。
この報道ではビットコインをトレードしているというだけで、買っているのか空売りしているのかは書かれていなかったが、以下の記事で報じたフィッツパトリック女史の過去の発言から考えればビットコインを買ったと考えるのが妥当だろう。
そしてそのタイミングの完璧さはビットコインのチャートを掲載すればすぐに分かる。
天才的トレードだろう。ドラッケンミラー氏の後のSoros Fund Managementの投資責任者にはあまり興味がなかったが、フィッツパトリック氏は面白そうである。才気あふれる彼女はコロナ相場の底値買いについて次のように言っていた。
売り叩かれている資産があるとき、倍賭けではなく3倍賭けできるようにいつも準備している。
そしてビットコインについてもそうしたのだろう。彼女の今後の活躍に期待したい。
インフレはどうか?
記事としてはもう十分面白いが、Form 13Fについてまだネタがある。Soros Fund Managementのポートフォリオの中で他に興味深いポジションはといえばD R Hortonであり、3.9億ドルの保有となっている。前回から規模はほぼ変わっていない。
D R Hortonはアメリカ最大の建設会社である。このタイミングで建設会社を買っているということは、当然ながらインフレと住宅バブルを見越しているのだろう。
金利予想やインフレというマクロ要因からビットコインまで、Soros Fund Managementの興味深い投資状況をお知らせした。そろそろ弟子のドラッケンミラー氏のポジションも報じられるはずであるので、そちらも楽しみにしてもらいたい。
(※8/15誤字を修正しました)