8月11日に発表された7月分のCPI(消費者物価指数)だが、債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏がその前後にTwitterでツイートしていたので少し取り上げておこう。
ガンドラック氏のインフレ予想
今回のCPIは投資家にとって注目の統計データだった。ここまで加速を続けていたインフレ率が明らかな減速となったからである。
インフレの減速を一番最初に予想したのは他ならぬガンドラック氏である。そのガンドラック氏は発表の前日に次のようなツイートしていた。
明日CPIが発表される。もう一度「上」を予想。
ガンドラック氏は元々7月がインフレのピークになると言っていたから、今回の「上」予想は当初の見通しを踏襲したということになるのだろう。彼の5月の発言を再掲載しておこう。
インフレ率は今後数ヶ月上昇を続けるだろう。7月にピークとなるかもしれないが、もしそこからも上昇を続けるようなことがあれば、経済にとって深刻な懸念となるだろう。
しかし実際に発表されたインフレの数値は減速だった。
前回6月がピークだったということになる。
これを受けて発表後にガンドラック氏は次のようにツイートしている。
インフレを計測するとき、わたしにとって「上」というのは継続的に4%を超えることだ。現在のCPIインフレ率は2ヶ月連続で前年同期比5.4%に達している。そしてこの数字は恐らくではなく間違いなく過小に計算されている。
これは少し苦しいのではないか。前月比ではなくコロナで物価が沈んでいた前年との比較で4%を下回るというのはありそうもないことで、それでは予想にならない。
そもそもガンドラック氏は5月という早い段階で7月頃がピークだと予想し、実際には6月(発表されたのは7月)がピークとなった。十分に精度の高い予想であり、上のような苦しい言い訳をせずとも自分の分析を誇って良いだろう。
今後のインフレ見通し
何よりこれらのツイートから分かる重要なことは、やはりガンドラック氏はラリー・サマーズ氏らのように今でもインフレを懸念しているということである。
ここから数ヶ月、現金給付や半導体不足による自動車価格の高騰などの短期インフレ要因が剥落してゆくが、その後は2つのシナリオがある。
1つは短期要因が剥がれた後に住宅価格高騰などの長期要因がCPIの数字を引っ張り、追加刺激策なしに長期インフレが実現してゆくシナリオ、もう1つは追加緩和なしにはインフレは実現せず経済成長とインフレが両方沈んで株価が下落し、政府と中央銀行の追加緩和をもって本当のインフレが実現してゆくシナリオである。
どちらに転んでもインフレにはなるのだが、一度市場が下落するかどうかで投資家にとっては大きな違いとなる。
ガンドラック氏は今回のツイートを見れば前者のシナリオを見ているようにも思えるが、しかし以下の記事を思い返してみれば後者のシナリオについて明確に語っているようにも見える。
いずれにしても短期要因の剥落が終わるまで数ヶ月かかる。もう少し考える猶予があると思って良いだろう。これからも著名投資家の相場観を報じてゆく。