金価格が急落している。6月にも大きめの下げがあったから、2段階の下げということになっている。
金価格の下落については6月の記事で警告している。
したがって下落の原因については例によって下落が始まる前に説明しているのだが、下げ相場が継続している今、状況をもう一度整理しておく必要があるだろう。
金価格急落
まずは金相場のチャートを掲載しよう。
一度目の急落は6月半ば、2度目の急落は一昨日からということになる。
6月の記事では過去の金融引き締め局面における金相場の値動きを検証し、利上げ局面においてゴールドの値動きは良くないということを示した。記事は6月6日に書いており2度の急落の直前のものだから、タイミング的には役に立つ記事となったと考えている。
過去の似た相場の分析は6月の記事で済ませたから、今回は現状と今後について考えてみたい。
2度目の急落は短期的には強い雇用統計が発表されてから大きく落ちたということになる。しかしより長期にはやはりアメリカのインフレ懸念である。物価上昇を懸念したFed(連邦準備制度)が利上げとテーパリング(量的緩和縮小)を示唆したことが今回の話の発端だが、それが今後どうなってゆくだろうか。
アメリカのインフレ見通し
筆者はこのインフレトレンドを長期的なものだと考えている。インフレの予想については経済学者ラリー・サマーズ氏の記事などを参考にしてほしい。
しかし一方で短期的には今後数ヶ月はインフレ統計に減速が見られる可能性が高い期間である。現在発表されている最新のインフレ統計はかなり強いものだが、3月に行われた現金給付の底上げを受けており、この底上げは今後数ヶ月で剥落してゆく。
このことを考えれば金相場には少しややこしい状況ということになる。長期的には利上げとテーパリングは不可避だろう。金価格は金融緩和を追い風に上昇してきたから、そうなれば金価格は下落することになる。
しかし今後数ヶ月インフレ統計が軟化すると予想するならば、結構激しい下落となっている現在の金相場はつかの間の休息を見出すかもしれない。
ゴールドの相場見通しと株式市場
よって金相場の見通しはこういうことになる。基本的には今後は利上げとテーパリングが進行し、金相場は下落を継続する。
しかし今後数ヶ月については下落はある程度収まる可能性がある。一番重要なのはあと数日で発表される7月のCPI(消費者物価指数)だが、この数値次第では今後数ヶ月の見通しについては変わってくる可能性があることは書いておきたい。
問題は利上げとテーパリングで金価格が下落した後の話である。恐らく金価格は金融引き締めを十分に織り込んで下落した後には上昇トレンドを取り戻すだろう。2016年11月にトランプ氏が大統領選で勝利して始まったトランプ相場において、金相場は金利上昇を織り込んで一度下落した後に上昇したような状況が始まると思われる。当時の金価格の推移は次のようになっている。
こう考えると話は株式市場も関係してくる。金融引き締めで先ず起こるのは金価格の下落だが、金価格はその後リバウンドを始める。株式市場がその時点でまだ下落していなければ、トランプ相場のように一定の期間株価と金価格がともに上昇する相場が続く。
しかしいずれインフレが猛威を振るい、株式市場が耐えられなくなるほどの金融引き締めを行わなければならなくなるか、あるいは株式市場を守るためにインフレを放置せざるを得ない場面が来る。
前者の場合には株式市場が下落し、金価格もこのタイミングでもう一度落ちるが、そこから中央銀行は緩和に転じ、金価格はそれこそ無制限の上昇を始める。
後者の場合には金価格は下落することなく無限の上昇を始めるだろう。それは中央銀行が金融引き締めを諦めたということであり、ドルの崩壊を意味する。
結論
やや複雑だが金相場についての現状をまとめるとこういうことになるだろう。6月の記事は過去の金融引き締め相場における金価格の推移について検証しているので、やはりそちらはもう一度見ておいてもらいたい。
あとはインフレは一時的だと予想している債券投資家のスコット・マイナード氏が同時に金価格暴騰を予想している理由をもう一度考えるべきだろう。わたしはインフレを予想しており、マイナード氏はデフレを予想していて、相反しているように見える。しかし実際には同じことを考えているのである。