Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がCNBCのインタビューで株式に対する弱気予想を繰り返している。ビットコイン暴落をタイミングごと言い当てた彼の予想だけに無視できないものがある。
これ以上ない好景気
マイナード氏は以前も紹介した「これ以上ない好景気だから売り時だ」という主張を繰り返している。このコメントについてマイナード氏は今回次のように補足している。
これ以上ない好景気ということは、もう上昇余地がないということだ。目一杯株式に賭けている資金を現金化するか、戦略を変えるか、そういうことになるだろう。
景気が回復したせいで、株価上昇をこれまで支えてきた刺激策は打ち止めとなっている。これ以上の刺激策を求めるならまず経済がもう一度沈まなければならない。経済がもう一度沈むなら、株式市場ももう一度沈まなければならない。マイナード氏の論理はそういうことだろう。
そして経済をもう一度沈めるのは、マイナード氏によればデルタ株の流行拡大である。デルタ株は日本だけでなく世界中で急拡大している。市場はコロナにもう慣れてしまった感があるが、マイナード氏はその状態をコロナ初期に市場がコロナを無視していた状態と同じだという。
2020年2月にCNBCに出演して、市場はコロナを完全に無視しながら市場最高値を更新していると言った時とまったく同じように感じる。
そしてその直後に市場は暴落を始めたのである。もう忘れてしまった投資家も多いかもしれないが、今のコロナの上昇相場はその後に始まっている。
マイナード氏は次のように続ける。
もうすぐロックダウンがあるだろう。ロックダウンは経済に影響する。そうなれば投資家のマインドにも影響するだろう。
調整は当たり前のこと
今回のインタビューが面白いのはここからである。
マイナード氏が予想しているのは15%程度の調整である。しかしそこで出演者の1人が「10%程度の調整はいつでも起きる、それがたまに起きるということは明らかなことで、何も特別なことではない」とマイナード氏に言った。
マイナード氏はどう反応したか。彼はこの批評に100%賛同すると述べた上で、次のように続けた。
確かにそれは明らかだ。調整が起きる可能性というのは株式市場では何も特別なことじゃない。
しかしわたしは当たり前のことを分かっている人が大好きだ。何故ならば、そういう人は本当に稀だからだ。
この発言から学ぶことは多い。マイナード氏が本物の投資家だということがこのコメントだけを見ても分かるだろう。
リーマンショックは事前に明らかだった。ジョージ・ソロス氏のような著名な投資家はリーマンショックの数年前から警鐘を鳴らし続けていた。しかし誰も耳を貸さなかった。
2018年の株価暴落も、量的緩和で暴騰した相場がそれを逆回しにする量的引き締めで暴落するということは明らかだった。しかし2018年の秋にわたしが周りの機関投資家に警告を発した時、誰もがそれを一笑に付した。その後3ヶ月で株式市場は20%暴落した。
相場を当てた経験のある投資家なら誰でもマイナード氏の言うことが分かるのではないか。マイナード氏は次のように続けている。
だが10%や20%の調整は一定の投資家にとっては結構なダメージだ。
明らかなことを見つけて行きたいと思う。市場は明らかなことをいつも無視するからだ。