世界同時株安が反発: リバウンドはいつまで続くか? 9月に米国は利上げをするのか?

世界同時株安が典型的な半値戻しを達成した。下落前から底値、そして反発した現在までの指標は大雑把に以下の通りである。

  • S&P 500:2100 -> 1867 -> 1988
  • ドル円:124 -> 116 -> 121
  • 日経平均:20500 -> 17700 -> 19100

リバウンドは続くのか? 個人的な見方はやや悲観的だが、投資家にとって何より重要なのは、何度も言うように、どちらに転んでも良いようにポジションを立てておくことである。

ここで推奨してきたように、急落前にS&P 500を空売りしておいた投資家、そして急落時にドル円を拾った投資家は、この急落を非常に楽しんでいることだろう。どちらに転んでも利益が出、かつ別のポジションを立てる機会が現れるからである。

中銀はどう出るか?

何にせよ、この後の展開は中銀次第である。Fed(連邦準備制度)の連銀総裁からのコメントが出揃ってきたので、レビューしてみよう。

アトランタ連銀総裁ロックハート氏

  • 「嵐のなかで利上げをしないことは妥当」
  • 「9月の利上げの意志は弱まった」
  • 「9月の利上げを五分五分と見るのは妥当」
  • 「年内の全会合で利上げを検討すべき」

クリーブランド連銀総裁メスター氏

  •  「米国経済はしっかりしており、利上げに耐えられるとの基本的な見方を変えていない」
  • 「9月の会合まで、最近の市場の混乱を含めすべての経済情報を精査する」

セントルイス連銀総裁ブラード氏

  • 「世界同時株安や中国経済減速による米国経済への影響は限定的」
  • 「利上げを開始すべきだ。その後の利上げペースは米国の経済状況に合わせて調節してゆくことができる」
  • 「9月の会合時点で市場がまだ不安定な状態にあれば、Fedが利上げを躊躇することは想定される」

カンザスシティ連銀総裁ジョージ氏

  • 「米国経済は堅調さを保っている」
  • 「現時点で、経済状況に関するわたしの見方を変えるものは目にしていない」

ニューヨーク連銀総裁ダドリー氏

  • 「現時点で、9月の会合で金利正常化を開始することは、数週間前に比べ切迫性が薄れている印象がある」
  • 「9月の会合までの経済情報次第では、切迫性が再び高まる可能性がある」
  • 「国際情勢を受け、米国経済の下振れリスクが幾分高まった」
  • 「短期的な市場の動きには過剰反応しないことが重要」

ミネアポリス連銀総裁コチャラコタ氏

  • 「経済見通しに大きな変化がなければ、年内の利上げは適切ではないと思う」
  • 「インフレが目標水準に戻るまで何年もかかることから、追加刺激策を検討すべき」

フィッシャー副議長

  • 「9月の利上げに対し、以前は強い根拠があった」
  • (9月の利上げの切迫感は薄れたかと聞かれ)「結論を出すには時期尚早だ」
  • 「最近の経済指標は良好であり、米国は利上げに向かっている」

以上が主な発言である。

市場に配慮も姿勢はほぼ変わらず

上記の発言を纏めれば、Fedの姿勢はほぼ変わっていないということである。

注目すべきは最近タカ派に転じていたロックハート氏が市場急落を受けて中立に転じたくらいで、コチャラコタ氏は元から唯一の緩和派であるし、イエレン議長の意見に近いとされるニューヨーク連銀総裁のダドリー氏は玉虫色の発言でバランスを取った形である。一番注目されたのは副議長のフィッシャー氏だが、まだ決まっていないと答えたのみである。

しかし、量的緩和の再開まで期待していた一部の投資家の期待は見事に打ち砕かれ、米国債の利回りは上昇し、ドル円は上がった。投資家の希望的観測で中銀の思惑を予想しないようにと、ここで書いた通りである。9月の利上げが確かかどうかは分からないが、充分にあり得るし、年内利上げの既定路線は全く変わらずだろう。

米国利上げ路線の復活で米国株は上値重く

市場では投資家の追加緩和への期待もなくなり、米国株は上値が重くなるはずである。株が上がれば上がるほどFedは利上げがしやすくなり、利上げのなか米国株が上がり続けることは考えづらい。

したがって、急落前にS&P 500の空売りを仕込んだ投資家はそのポジションを維持すべきだし、仕込み損ねた投資家も、短期的なリバウンドはヘッジ売りを仕込むチャンスである。逆に、株価が下方向に動いた場合は、株ではなくドル円を買い下がりすべきである。ドル円については以下の記事を参考にしてほしい。

ドル円急落の記事ではドル円の買いと米国株の底値買いを発表したが、どちらも利益となっている。しかし重要なのは短期的なポジション調整ではなく、大局的な見方である。

いずれにせよこれからはすべて中銀次第となる。米国が何故利上げを急いでいるかについては、以下の記事を参考にしてほしい。これは重要な記事である。

これまでは米国の利上げ、日本とユーロ圏の緩和が各国の相互利益となってきたが、これからはこの協調が崩れてゆく場面である。以下の記事で書いた通り、中銀の協調が崩れるときが、量的緩和バブル崩壊の場面となるだろう。

ここからは本当に難しい相場になる。金融が本職ではない投資家については、本当はキャッシュをお勧めするが、それでも何かに投資をしたい投資家には、ここの記事が参考になれば幸いである。