7月13日にアメリカのCPI(消費者物価指数)の最新データが公表され、6月のインフレ率は前月比年率11.4%となった。
インフレは再加速
5月のデータでインフレが減速していたことからピークも近いかと思っていたが、6月のデータは5月の8.0%から再加速した形となる。
CPI成長率のグラフは次のようになっている。
遂に10%を超えた。この数字は前年同月比ではないので、前年落ち込んだ物価からの回復を意味しているのではない。
債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は「7月頃にピークになる」と言っていたから、この動きは彼の想定内なのかもしれない。彼は次のように述べていた。重要なのでもう一度引用しておこう。
インフレ率は今後数ヶ月上昇を続けるだろう。7月にピークとなるかもしれないが、もしそこからも上昇を続けるようなことがあれば、経済にとって深刻な懸念となるだろう。
いずれにしてもインフレの一時後退が予想される理由は、アメリカで3月に行われた3度目の現金給付による需要増加や、半導体不足による自動車価格の高騰といった一時的な要因がそろそろ剥落してくるからである。
インフレの内訳
では、その一時要因がどうなっているか、CPIの内訳を見てみよう。
まずは注目の中古車である。半導体不足はニュースにもなったが、未だその影響は大きいようだ。
5月にはこの数字が一旦減速したので全体のインフレ率も落ち着いたが、6月にまた加速し全体を押し上げたということである。
こうした一時的要因が数ヶ月の間に剥落を始めることは間違いがない。一方で問題は、短期要因が剥落した後に見えてくる本当のインフレの姿がどのようなものかである。
それを示す1つの指標が、家を所有する人が仮に家賃を払ったと仮定して算出する「持ち家のみなし家賃」である。
この数字は着実に上がってはいるが、ガンドラック氏や経済学者のラリー・サマーズ氏が指摘するように、既に物凄い勢いで上がっているアメリカの住宅価格の実情を反映していない。
また、最近のインフレ懸念後退で一部のコモディティ銘柄は急落しているにもかかわらず、ガソリン価格や電気代などに大きく影響を与える原油価格が上昇を続けていることも今後のインフレを加速させるだろう。
急落している一部のコモディティ価格については以下の記事で報じておいた。しかし原油はOPECの内輪もめもあり下がっていない。
本来はテーパリング(量的緩和縮小)の示唆が長期金利を上昇させこうした過熱を冷やすはずだったのだが、問題は長期金利が下がってしまったことである。アメリカの長期金利は次のように動いている。
金利下落を予想的中させたスコット・マイナード氏が金利の更なる低下を唱える中で、筆者はやはり金利再上昇シナリオに傾いている。
一番の理由は低下した金利そのものである。低くなった金利が既に過熱している不動産価格や、下がらない原油価格に油を注がないとはやはり考えがたい。
株価にも影響を与える金利については以下の記事で纏めてあるので、そちらも参考にしてもらいたい。