一時市場を賑わせたアメリカのインフレ懸念が後退している。そこでインフレ相場で上がってきた金属や農作物などのコモディティ銘柄も一部はかなり下落してきた。今回の記事ではその現状を確認するとともに、今後の見通しについて説明してゆきたい。
アメリカのインフレ懸念
市場がインフレについて急に懸念を始めたのは今年の春頃のことだっただろうか。現金給付などの政策が物価高騰を引き起こすリスクについてはここでは去年から報じており、ここの読者にとっては何を今更という感じだっただろう。
そしてインフレ懸念が持ち上がってから数ヶ月、今や市場ではインフレは問題なかったという風潮が主流になっている。数ヶ月でよくもこれだけ意見が変わるというもので、いわゆるミスターマーケットの情緒不安定ぶりが見て取られる。
実際のところはCPI(消費者物価指数)の数字は短期要因の剥落によって一時的に落ち着きを見せており、それは数ヶ月は続くだろうということである。
コモディティ市場
さて、それでも投資家はミスターマーケットに付き合わなければならない。市場のインフレ懸念が過熱したり後退したりすると一番影響されるのがコモディティである。
ゴールドや原油やコーンなどが物価高騰懸念を先回りして買われていた訳だが、それらの銘柄は今どうなっているだろうか? まずは金価格チャートから見てゆこう。
アメリカの長期金利に影響される金価格は他のコモディティに比べて低迷していたが、今年の3月からはやや持ち直したように見えていた。しかしインフレ後退懸念が出始めるとまた急落し、春頃の安値に一時近づく場面があった。
次は銅価格である。中国での建設と電気自動車の需要も見込まれる銅は今回のインフレ相場の一番の主力であり、チャートは以下の通りだが5月から下落しているものの長期上昇トレンドを崩していないように見える。
しかしよりマイナーなコモディティはそれほど好調なわけでもない。
順番に見てゆくが、次に見るのはこれも堅調な原油である。
やはり下落相場でもメジャーな銘柄は最後まで落ちないものである。
しかし他のコモディティはどうだろうか。以下はコーンのチャートである。
強い上昇トレンドから急落している。
次は大豆である。
こちらもトレンドを崩す下落となっている。そして極めつけは暗号通貨だろう。とりあえずはビットコインの価格チャートを載せておこう。
コモディティ価格の今後
金価格を除き、コモディティ価格の見通しはインフレの見通しにかなり依存している。この辺りについては以下の記事で説明した通りである。
市場の期待インフレ率は以下のように推移している。
インフレが懸念されればコモディティは上がり、デフレが懸念されればコモディティは下がる。ミスターマーケットは主張があまり一貫しない人なので、数ヶ月の間で価格が急騰したり急落したりするわけである。
繰り返しになるが今後数ヶ月は3月の現金給付などの短期要因がCPIの数字から剥落し、インフレ率は下落することになる。
しかしその後インフレがどうなるかが投資家にとっての問題である。その後にインフレ加速が再開するのであれば、上記の銘柄のうち急落しているものは今後数ヶ月が買い場だということになる。ビットコインに関して言えば、ジョージ・ソロス氏のファンドが底値買いに動いている形跡がある。
すべてはインフレ次第となる。まだ買いには動けないが、急落しているコモディティ銘柄をウォッチリストに加えておいても良い頃合いではあるのではないか。
もうすぐ最新のCPIの数字も発表される。そちらも報じるつもりなので、楽しみにしていてもらいたい。