長期金利低下でハイテク株急騰、銀行株軟調

Fed(連邦準備制度)が利上げとテーパリング(量的緩和縮小)を示唆した後、アメリカの長期金利は下落を続けている。これを受けて株式市場の各セクターはどう動いているだろうか?

金利低下と株式市場

6月のFOMC会合で利上げとテーパリングが示唆されたが、その後長期金利は下落している。アメリカの長期金利は次のように推移している。

この動きを予想していたのが債券投資家のスコット・マイナード氏であり、彼によれば利上げによってインフレが制御不能にならないという安心感からのディスインフレ・金利低下相場だという。

そしてこのマイナード氏の予想が的中するならばハイテク・グロース株にとって有利になるということを以下の記事で説明しておいた。

インフレ懸念によって一番ダメージを受けていたのがハイテク株だからである。

そしてそのハイテク株がやはり急騰を始めた。以下はAmazon.comのチャートである。

以下はAppleの株価チャートである。

コロナ相場の初期に巣ごもり需要で急騰してから、その後はインフレ懸念で他の銘柄が上昇を続けるなか1年近く横ばいだったハイテク株に資金が戻ってきたということである。

他には動画配信サービスのNetflixも上がっている。

以下はGoogleを傘下に持つAlphabetである。

1年ほどの逆境にもかかわらずハイテク株を推し続けてきたスタンレー・ドラッケンミラー氏の粘り強さが報われたということだろう。

ちなみに彼の推し銘柄Microsoftも良好なパフォーマンスとなっている。

金利低下で軟調な銘柄

長期金利低下の恩恵を受けてハイテク株が息を吹き返した一方で、軟調な銘柄もある。銀行株や保険株である。以下は大手銀行のWells Fargoの株価チャートである。

以下は保険大手のAmerican International Group(AIG)である。

短期資金を借りて長期で貸すことを生業とする銀行株や保険株の収益は短期金利と長期金利の金利差に影響を受ける。利上げとテーパリング懸念で短期金利が上昇し長期金利が低下している今の状況は銀行株や保険株にとって厳しい状況というわけである。

結論

現在のハイテク株好調、銀行保険株軟調相場はいつまで続くだろうか? 根拠となっているディスインフレ観測の理由は中央銀行の動きだけでなく、インフレ統計で短期的なインフレ要因が剥落しつつあることである。

債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏などはインフレは今ぐらいの時期に短期的なピークを迎えると当初より予想していた。3月に行われた3度目の現金給付の影響などの短期要因は今後数ヶ月かけて更に剥落してゆくだろう。だからこのディスインフレ相場は数ヶ月ほど続く可能性が高い。

一方でアメリカのインフレを監視する投資家にとっての問題は、コロナ後の物価高騰が単に短期要因にだけ依るものなのかということである。

ガンドラック氏を含め、インフレの長期性を危険視する論者は多い。筆頭は経済学者のラリー・サマーズ氏だろう。もうすぐ6月の消費者物価指数も発表される。投資家はインフレ統計には今後も目が離せないだろう。