コロナ禍に行われた現金給付などの景気刺激策によってアメリカでは物価上昇が始まっており、インフレ過熱を懸念したFed(連邦準備制度)は利上げとテーパリング(量的緩和の縮小)を示唆した。それで株式市場がどうなるかである。
テーパリングとハイテク株
リーマンショック以来、低金利政策の恩恵を受けて特に上昇を続けてきたのがハイテク株だから、緩和の縮小を受けてハイテク株が真っ先に下がりそうなものである。
しかし実際には、これまで特に不調となっていたハイテク株の高成長銘柄がテーパリングを受けて息を吹き返した感がある。例えばNetflixである。
Appleも今月から上昇基調にある。
NASDAQ指数自体も長らく横ばいだったところが頭1つ分突き抜けた形となっている。
ハイテク株上昇の理由
これらの動きは一見すればレンジ相場の中の小さな上下の1つと見ることも出来るが、今月のハイテク株やグロース株の上昇には理由がある。長期金利の低下である。
アメリカの長期金利は次のように推移している。
テーパリング示唆で金利低下という一見不可解なトレンドが続いている。しかしこの動きを予想していた人物がいる。債券投資家のスコット・マイナード氏である。
マイナード氏は利上げ観測が短期金利を上昇させる一方で、中央銀行がインフレを放置しないというメッセージになることから長期金利に対しては下方向に作用すると予想していた。
そして今のところ彼の言う通りの動きとなっている。
金利低下が継続する限りハイテク株にはプラス
この金利低下がいつまで続くかは分からない。しかしインフレを警戒しているジェフリー・ガンドラック氏や経済学者のラリー・サマーズ氏も短期要因の剥落でインフレが一時的にはピークを迎えると言っていることから、少なくとも今後数ヶ月は低インフレ、低金利のトレンドが続くかもしれない。
しかし低金利は将来のインフレを更に過熱させることになる。この債券市場の動きは短期的にはディスインフレ、長期的にはインフレ加速なのである。
それでも長期金利が上がらない限り、投資家は短期的にはディスインフレ、低金利相場に付き合うことになる。仮にそうなるとすれば、恩恵を受けるのはハイテクグロース株だろう。ハイテクグロース株はインフレで一番ダメージを受けると言われ、売られてきた銘柄だからである。今はその巻き返しが起こっている。
ガンドラック氏の言う通り、インフレ率が月単位でどのように推移するかまで的確に予想することは出来ない。しかし短期的ディスインフレ相場を懸念する投資家にとっては、そのリスクをヘッジするためにこれまで売られてきたハイテク株を一時的にポートフォリオに組み込むのも悪くはないのかもしれない。ドラッケンミラーの言葉がここで効いてくるわけである。