世界同時株安は暴落ではなく急落: 株安はいつまで続くか? 何を買うべきか?

米国利上げ前の世界的な株式市場急落は、ここでもずっと言及してきたことで、読者のなかに驚きはないだろうが、それでも良い銘柄まで売られている現状ではパニックになりかねないので、長期的に何が不変なトレンドで、急落のなか何を拾えばいいのかを再度纏めておこう。

円安トレンドは不変

先ず、リスクオフでどれだけ円高になろうとも、万一米国が利上げを撤回しようとも、円安は不変のトレンドである。

リスクオフで円高になるのは、金利の低い円が投機的資金の調達通貨になっているからである。投機筋は借り入れた円を売ってドル建てやユーロ建てなどのリスク資産を購入する。

したがって、どれほど長期的な円安が確かなトレンドでも、投機筋のポジションが解消される限り、短期的には円は買い戻されるほかない。よってリスクオフの円買いを、円安トレンドが疑われていると勘違いしてはいけないのである。

しかも円安は米国の利上げがなくともトレンドとして成立する。米国の利上げについては、Fed(連邦準備制度)は「実体経済より金融市場を気にしている」と以下の記事で書いた。

より詳しく言えば、利上げの条件は長期金利が上がり過ぎないことと、株式市場が過度に下落しないことである。Fedは株式市場の調整は許容する。利上げをするときに株式市場の調整を覚悟しない中央銀行はないからである。したがって、利上げに関しては、株式市場が何処まで下がるのかということが重要になる。

しかし、万一米国が利上げを撤回する場合にも、円安の長期トレンドは変わらない。米国が重視をするのは、利上げをすること自体ではなく、他国よりも早く利上げをすることだからである。この点については以下の記事を参考にしてほしい。

したがって、米国の利上げが遅れたり、撤回されることがあっても、日本の金融引き締めが米国より先になることはない。これは日本の経済事情にも起因する。

しかし、ドル円のボラティリティが大きくなる事は覚悟するべきである。個人的には115円か、株式市場の下げ幅が大きくなれば110円までの調整も一応考えて徐々に買い下がろうと思う。買い下がりの開始は120円前後を考えている。ドル円の長期的展望については以下の通りである。

世界的な低金利は長期継続

さて、次に挙げるべき不変のトレンドは世界的な低金利である。これについては以下の記事に書いた通りで、世界経済は追加の金融緩和かデフレ入りかのどちらかを選ばなければならない。

世界的なコモディティ市場の下落はデフレの兆候を示しており、低インフレは長期金利を低下させる。これは米国の利上げ後もある程度続く可能性があり、つまりは不動産は買いだということである。

地域としては緩和の続いている日本とユーロ圏が考えられるが、日本については消費増税が不動産市場の勢いを減じている。したがって買いであるのはユーロ圏の不動産株である。フランクフルト国際空港を保有しているFraport (XETRA:FRA、Google Finance)を推しているのはいつもの通りであるので、これまでの記事を参考にしてほしい。

株安はいつまで続くのか?

投資家の一番の疑問はこれだろうが、一番の答えはどれだけ下がっても大丈夫なポジションにしておくことである。これまで書いてきたように、わたしのポジションは買いよりも空売りのほうが多いが、どれだけ下がろうともショートポジションは外さず維持するつもりである。

それでも下落幅を予想したい投資家に対しては、ここ数年で一番の下げ幅になる可能性があるとだけ答えておこう。これは単純に、米国の利上げや中国の景気減退など、下落要因が近年最大であるからである。

S&P 500 (Google Finance)のチャートを見れば、近年最大の下げは2014年後半の10%程度の下落である。したがって15%の下げは十分に有り得ることだと見ておくべきだろう。S&P 500は高値から既に5%程度下落しているので、あと10%、数値で見れば1800台までの調整は想定に入れておくべきである。

それでもまだ暴落ではない

しかしながら、それでも今回の世界同時株安は本当の暴落ではない。債券と株式が同時に下落しない間は、金融市場が中央銀行のコントロール下にあるということである。一番の問題は量的緩和相場が本当に終わりを迎えるときであり、その時はまだ来ていない。

市場が世界的な量的緩和の終わりを織り込むときに何が起こるのかについては、いつも言及する通り、以下の記事を参考にしてほしい。今回の株安は、将来起こるべき暴落に比べれば生易しいものである。