マイナード氏: 株価下落と金利低下の理由、今後の推移予想

6月16日にFOMC会合でアメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は来年までの利上げ可能性をシグナルした。

結果として株式市場は急落したが、この説明を債券投資家スコット・マイナード氏の会合前のインタビューに求めたい。

何故会合前のインタビューに会合後の動きの説明が載っているのか? マイナード氏は株式市場と債券市場の両方の動きを予め予想していたからである。

何故利上げか?

そもそもの問題はインフレである。コロナ禍に行われた現金給付などの景気刺激策により、アメリカでは物価上昇が始まっている。

そしてFedのパウエル議長は4月のFOMC会合まではインフレ懸念を無視していた。

しかし今回の会合で利上げに動く可能性をシグナルしたため、これまで低金利に支えられていた株式市場が下落したのである。米国株は次のように推移している。

マイナード氏の予想した動き

パウエル議長はインフレを無視しているが、いずれゼロ金利を撤回してインフレ抑制に動かざるを得なくなる。この動きを早くから予想していた投資家がいる。マイナード氏である。3月に発表された彼の相場観を見直してみよう。

恐らく第2四半期から第3四半期あたりに株式市場では調整があるだろう。

2018年12月には株式市場が突然暴落し、中央銀行は政策変更を余儀なくされた。そういうシナリオに今の相場は向かっている。遠からずそういう種類の調整があるだろう。今年中に株価は下落し、中央銀行は対応を強いられる。

2018年の株価暴落とは、パウエル氏が金融引き締めを強行して株式市場が暴落した出来事のことである。当時のことはここでは事前に予想して報じており、以下の記事に纏められている。

今回も同じように中央銀行の利上げ観測によって株式市場が急落している。それも「第2四半期から第3四半期あたりに株式市場では調整がある」とマイナード氏は予想していた。今は6月、第2四半期の終盤である。見事というほかないだろう。

利上げで金利低下

FOMC会合の後、株式市場の他に金利についても動きがあった。アメリカ長期金利は当初、利上げ予想を素直に織り込んで上昇(債券価格は下落)した。

しかしマイナード氏は会合の結果を受けて次のようにコメントしていた。

今日の発表が幾分タカ派に聞こえるものであったとすれば、Fedはインフレに遅れを取らないと債券市場が信じるようになり、金利の上昇圧力が和らぐ可能性がかなり高い。だから現在の債券価格下落は買い場だろう。

これはまだ市場で金利が上昇していた時に出されたコメントである。マイナード氏は中央銀行の利上げシグナルで債券上昇、金利の低下を予想したことになる。そしてそれは市場の反応とも反していたが、その後アメリカの長期金利はどうなっただろうか? 以下の通りである。

見事に金利低下(債券価格上昇)となっている。利上げで金利低下という一見逆説的な予想を見事に当てたことになる。

結論

ビットコインの上昇と下落を当てたことといい、彼は天才なのだろうか。

そのマイナード氏は株式市場の今後の推移についても事前に丁寧に説明してくれている。

中央銀行は株式市場が15%以上下がることを許容しないだろう。

今年中に株価は下落し、中央銀行は対応を強いられる。

中央銀行はイールドカーブコントロールを始めるだろう。例えば10年物国債の金利に上限を定める。いくらかは分からないが、1.5%か2%か。1940年代には2.25%だった。そうすれば金利が上限に近づくと中央銀行が介入する前に市場が国債を買おうとする。そうするとバランスシートの膨張をいくらか和らげられる。

株価は最終的には上昇するだろう。

下げ幅とその後の動きまで含めて丁寧に予想してくれている。

今後もマイナード氏の予想通りに推移するだろうか。引き続き金融市場の動向とマイナード氏のコメントを報じてゆく。