6月FOMC会合結果で株式市場が下落した理由

米国時間6月15日から16日にかけてアメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を開催し、政策金利の現状維持を決定した。

ここまでは当然市場の想定通りだが、アメリカで進行するインフレを受けての今後の利上げ・金融緩和縮小の見通しはどうなっただろうか。

声明文とドットプロット

いつもどおり声明文から見てゆきたい。前回の文面に比べ、「新型コロナウィルスは米国および世界中で甚大な人的・経済的困難をもたらしている」という箇所が削除され、「米国ではワクチン接種の進行が新型コロナウィルスの拡大を減少させた」という文面に変更された。

アメリカにおける最近の感染者減少を反映し経済に強気な文面であると言えるが、変更箇所はここともう1箇所と少なく、どちらも単に現状を描写したものであるのでサプライズとは言えない。

ややサプライズがあったのは、会合のメンバーの今後の利上げ見通しを並べたドットプロットである。

まず年内ついては18人全員が利上げなしということで前回から変わっていない。しかし2022年の利上げ回数予想については次のように変化している。

  • 利上げなし: 14人 -> 11人
  • 利上げ1回: 3人 -> 5人
  • 利上げ2回: 1人 -> 2人

更に、2023年までに(2022年に行われるならばそれも含めて)2回か3回の利上げを示すドットプロットとなっており、市場予想よりはタカ派であったと言えるだろう。

パウエル議長の記者会見

パウエル議長の記者会見では現在行われている量的緩和の縮小(テーパリング)について話し始めることが表明された。Fedがテーパリングについて話し始めることが市場に大きな意味をもつことから、市場関係者が最近「Fedはいつテーパリングについて話し始めることを始めるのか」とよく言っていたことを踏まえ、パウエル氏は次のように述べた。

お望みならば、今回の会合を「(テーパリングについて)話し始めることを話す」会合だと考えてもらって構わない。この言い方は役目を終えたので、引退させることを提案する。

つまり、今後Fedはテーパリングについて議論するということである。

市場の反応

利上げとテーパリングを示唆した今回のFOMC会合を受けて、まず株式市場は下落した。

1日の下落幅はさほど問題ではないが、5月以降上値が重くなっているのは株価のバリュエーションが高くなってきたことに加え、Fedの緩和終了が重しとなっているためだろう。

そして長期金利は上昇している。

金利は株価下落の影響も受けてそれほど上がらないかとも思っていたが、しっかり上がっている。株価下落と金利上昇(つまり債券価格)の組み合わせは市場にとってあまり喜ばしくないが、とりあえず市場は定常な反応をしているように見える。

結論

今回の会合は利上げとテーパリング示唆で株価と債券下落という典型的な結果となった。しかしこの種の下落は本当の下落局面に比べればまだまだである。今回の利上げとテーパリングの示唆はFedが自主的に行なったものであり、撤回しようと思えば撤回できる。

しかし本当の下落はFedが引き締めを撤回しないか、撤回できない時に起こる。前者は2018年にパウエル氏が引き起こした株価暴落である。

そして次の株価下落は後者の種類のものとなるだろう。つまり、インフレが止まらなくなりFedが引き締めを止められなくなるのである。

複数の著名投資家が引き締めから株価急落、そして緩和再開のシナリオを見込んでいる。今回のFOMC会合はそこへの一歩だと言えるだろう。