かつてジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを率いたスタンレー・ドラッケンミラー氏が6月10日に発表されたインフレ統計にコメントしている。
経済は加熱しているか
最新5月のCPI(消費者物価指数)は年率8.0%と、4月の9.6%から減速した。
また、内容も半導体不足が短期的に価格を押し上げている中古車や、コロナで低迷した後の回復期にある航空券代など、短期的要因が少なくなかったことから、債券投資家のスコット・マイナード氏など信頼できる論者からもインフレは一時的だとの声が出ている。
しかしマーケットの申し子であるドラッケンミラー氏は経済が加熱していると主張している。
以前、加熱の証拠としてドラッケンミラー氏が挙げていたのは小売店売上高である。実質小売店売上高のチャートは次のようになっている。
このチャートが異常事態であるのは明らかである。ドラッケンミラー氏の説明によれば、このチャートはコロナによる溝を埋め、元のトレンドまで回復するだけでは留まらずそこから更に爆発的上昇を始めている。
コロナ禍で経済が低迷したにもかかわらず小売店売上高が爆発している理由は勿論、現金給付などの政府による景気刺激策である。
そしてドラッケンミラー氏によればそうした歪みは実体経済だけではなく株式市場にも及んでいる。彼によれば、CPI発表後に金利が低下し株式市場が安心によって上昇したのはバブル的な動きだと主張する。彼はCPI発表後にCNBC宛のメールで次のように述べている。
市場は喋るのを止めている。
市場によるリスクの無視は、中央銀行が市場に向けたシグナルを撤回するまで続くだろう。
結論
マイナード氏などの論者がデフレ的傾向について語っているにもかかわらず、ドラッケンミラー氏のインフレ予想、そして中央銀行の利上げ予想は変わっていないようである。
そして中央銀行の金融引き締めがあれば株式市場がどうなるかについてのドラッケンミラー氏の意見は、以前紹介した通りである。
マイナード氏のような論者は、小売店売上高や住宅価格などインフレ的なデータについてはどうコメントするだろうか。彼はデフレ要素を示すだけでインフレ要素に対してはコメントしていない。
市場全体がインフレ統計に注目している。株式市場は今後数ヶ月、CPIの発表に対して神経質になるだろう。