引き続きThe Hustleによるスタンレー・ドラッケンミラー氏のインタビューである。今回紹介するのは、彼が投資家という職業を選んだ理由について語っている部分である。
ドラッケンミラー氏と経済学
ドラッケンミラー氏は最初から金融をやるつもりではなかったらしい。彼は自分のキャリアの最初についてこう語っている。
元々はボウディン大学で英語を専攻していた。そこから経済学を選んだのは新聞を知的に読みたいというだけの理由だった。経済学で博士号を取ろうとしたがその時に思った。「この連中は気違いだ。経済を無理矢理数学の公式に押し込めようとしている。何の意味もなしていない。」
ドラッケンミラー氏は大学で経済学に失望したらしい。さもありなん。学者の世界では未だにフィリップス曲線のようなものが信じられており、それを真面目に学んだ人々が中央銀行を支配している。
資産運用の世界ではそんなことをすれば即座に資金を失う。だから使えない経済学はどんどん捨てられてゆく。資産運用のプロから真面目に受け取られている経済学者はラリー・サマーズ氏くらいのものだろう。
経済学には失望したものの、ドラッケンミラー氏はその後結局銀行に務めることになり、投資に熱中してゆくことになる。その後彼は自分のヘッジファンドを始め、ジョージ・ソロス氏に雇われてクォンタム・ファンドを率い、今では自分のファンドを自分の家族の資産を管理するファミリー・オフィスに転換して投資を続けている。
ジョージ・ソロス氏に雇われたくだりの話は以下の記事で紹介しており、非常に興味深い話なので読んでみてもらいたい。
投資を好きであること
ソロス氏のような優れた投資家に会えたことも含め、ドラッケンミラー氏は自分のキャリアを気に入っているようである。彼は次のように語っている。
自分は幸運だった。ただ自分の情熱に従った。義理の母はわたしは学者馬鹿のようなもので投資がなければ他には何も出来ないだろうと言った。
ドラッケンミラー氏のような頭の良い人物が投資の他に何も出来ないかどうかは疑問だが、それだけ投資の仕事が好きだということである。経済について考え、他の投資家や中央銀行と意見を戦わせ、自分が正しいと信じる時にはその方向に資金を賭ける。彼は今中央銀行が間違っていると信じている。
経済を分析する仕事はそれが好きでなければ出来ない。好奇心が投資家に物事を細部まで調べさせ、自分のポジションが正しいという信念を強化するからである。ドラッケンミラー氏は次のように語る。
投資という業界では特にそうだが、わたしのように仕事を愛する人々は仕事にとても魅了され、知的な刺激を受けている。
もしあなたが仕事に熱狂しておらず、ただ金のために仕事をしているなら、その人がそういう人々に勝てる見込みはない。彼らはあなたを圧倒して打ち負かしてしまうだろう。
お金のために投資をしているなら、少ない労力で投資を行うことがその人にとって利益となるだろう。しかし彼のような投資家にとっては多く考えることがその人にとって利益となる。考えることが好きだからである。
そもそも好きでもないことに多く時間を費やすことが幸せだろうか。彼は次のように続ける。
もしあなたがアメリカ人なら、すべてのアメリカ人がそうではないかもしれないが、週に60時間か70時間は仕事をすることになる。仕事が好きでないなら、それだけの時間をどうするんだ?
年収が5万ドル(訳注:およそ550万円)だったとしてもこの仕事をやるだろう。本当だ。ただ本当に投資が好きなんだ。
株式市場はコロナ相場でかなり上がってきた。それでコロナ後に投資の興味を持ち始めた投資家も多いだろう。
しかし筆者は問いたい。あなたの人生に本当に投資は必要だろうか?
本当に投資が必要ならば良いだろう。しかしただ上がるから買いたいと思う投資家が振り落とされる相場が、今後1年か2年の間に始まろうとしている。市場では常に自分が試されるだろう。