なかなか面白く過激な発言である。かつてジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運営したスタンレー・ドラッケンミラー氏によると現在のコロナ相場が崩壊し株価が大きく下落するのは間違いないという。The Hustleによるインタビューをお伝えしたい。
インフレと金融引き締め
ここの読者にはお馴染みだが、現在の相場の問題はアメリカのインフレである。コロナ禍における政府の現金給付などの影響でアメリカでは物価高騰が始まっており、ドラッケンミラー氏を含む機関投資家やラリー・サマーズ氏などの経済学者はこのままでは物価は上がり続けると警告している。
しかし3月に行われたアメリカで3回目の現金給付の短期的影響が落ち着けばインフレ率は夏頃には一旦落ち着くという見方も存在する。債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏のものである。以下の記事で報じている。
しかしドラッケンミラー氏にとって物価高騰は確定シナリオであるらしい。彼は次のように主張する。
インフレは十分に強く、間違いなく中央銀行はそれに対応することになる。
異論の余地はない。現在のバブル相場は十分に行き過ぎている。中央銀行が金融引き締めを行なった瞬間に株価が大きく下がると考えるのに十分過ぎる行き過ぎだ。
コロナ以来、株価は現金給付と低金利に支えられていた。しかしインフレ懸念でコロナ以後の金利低下は巻き戻されてしまった。アメリカの長期金利は次のように推移している。
金利は元の水準に戻っている。つまり、コロナで株価を支えていた両翼のうち片翼は既に失われている。
このままインフレが進んで中央銀行が金融引き締めを強いられれば、金利はコロナ前の水準を上回ることになり、株価を支えていた低金利は株価にのしかかる高金利になるだろう。そのままインフレが止まらなければ中央銀行も金融引き締めを止められず、ドラッケンミラー氏の言うように株価は暴落することになるだろう。
インフレ見通し
ということで、すべてはインフレにかかっている。これまで資産価格が上がってきたのもインフレの力であれば、株価を暴落させるトリガーになるのもインフレである。
しかしインフレは何処まで進むだろうか。1970年代から1980年代のアメリカのように年率10%を上回る物価高騰が始まるのだろうか。それは消費者にとって気になるところだろう。ドラッケンミラー氏はこう語っている。
インフレが起こるというのがメインシナリオだが、バブルが弾けたためにインフレが起こらなかった2007年から2008年と同じようなシナリオに対してもオープンだ。当時、結果としてインフレは現れなかった。
1980年代を最後にアメリカでインフレは起こっていない。何故ならば、現れる前にバブルが崩壊して弾けたからである。2008年のリーマンショックの直前も、現在のようにアメリカでは住宅バブルが起きていた。
しかしそれは1980年代のような物価高騰になる前に潰れた。バブルが崩壊して不況が訪れたからである。
どちらにしても不幸な結果ではないか。国民にとっては同じことである。物価高騰で日用品が買えなくなっても、不況で給与が下がって日用品が買えなくなっても同じことではないか。
しかしトレーダーにとっては対応の仕方が変わってくる。転換点は中央銀行の行動である。パウエル議長が間違いを認めインフレの脅威に気付くのはいつだろうか。それまでにもう少し時間はあるが、そう遠い未来でもないだろう。