ここまで長らく著名投資家のインタビューばかりを報じてきたが、今回は彼らの実際のポジションについて解説したい。今回取り上げるのはかつてジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたスタンレー・ドラッケンミラー氏である。
インフレを見事予想したドラッケンミラー氏
現在市場ではアメリカにおける物価高騰が懸念されているが、ドラッケンミラー氏は早くよりその可能性を指摘してきた著名投資家の1人である。
インフレを予想したドラッケンミラー氏が資金を投じたのは貴金属や穀物などのコモディティの買いと米国債の空売りである。
こうしたトレードは大いに成功したと言える。ドラッケンミラー氏はどのコモディティを買ったのかは明らかにしていないが、日用品価格の高騰に先駆けてコモディティ銘柄はほぼすべて上昇している。以下は例として銅価格のチャートである。
そしてインフレ相場で起きるのが金利の高騰である。金利の上昇は債券価格の下落を意味するので、ドラッケンミラー氏は米国債の空売りを行なった。アメリカの長期金利は以下のようにインフレ懸念で上昇(債券価格は下落)しているので、こちらも成功となっている。
経済の大きな流れを予想して賭けるグローバルマクロ投資家の面目躍如である。
ドラッケンミラー氏のハイテク株投資
一方でドラッケンミラー氏がその他に投資をしていたのがアメリカのハイテク株である。しかしこちらについてはインフレ相場ではパフォーマンスが悪いかもしれないとドラッケンミラー氏自身が認めていた。彼は自分のハイテク株投資について以前次のように述べている。
これから数年4、5%のインフレが来るとすれば、高成長株が他の株に比べて非常に不利になることは歴史的に考えて異論の余地はない。
しかしそれでもハイテク株には成長の見込みがあるとして投資を継続していた。彼は次のようにも述べている。
企業と話をすると企業は皆デジタル化を急いでいる。デジタル化に乗り遅れると競争に負けてしまうからだ。
デジタル化への移行はまだ3、4イニング目だ。コロナのおかげで1イニング目から3、4イニング目までジャンプしたが、まだ9イニング目ではない。
それで彼の実際のポジションの方はどうなっているのかというのが今回の話である。
Form 13F
いつもの通り機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fを参照しよう。
ドラッケンミラー氏の米国個別株最大ポジションはMicrosoftであり、次に大きいハイテク株はAmazon.comだったが、先ずMicrosoftについては前回の12月末のポジションに比べ、今回開示された3月末のポジションは5.9億ドルから5.0億ドルに減額されている。株価は次のように推移している。
上に述べた通りインフレ懸念でグロース株は軒並みダウントレンドとなっている中、銘柄選びの天才ドラッケンミラー氏の最大ポジションMicrosoftの株価は上昇している。しかしそれでもドラッケンミラー氏はポジションの規模を20%ほど縮小した。
一方で2番目に大きかったハイテク株ポジションのAmazon.comはMicrosoftほどの好調とはいっていない。こちらも2.7億ドルから2.3億ドルまで減額されている。
彼の凄いところはこれらのハイテク株を去年の株価暴落の大底で買ったということである。以下は去年の記事である。
結論
やはりドラッケンミラー氏としてはインフレを懸念してポジションをやや小さくしたのだろう。しかしハイテク株の長期的なポテンシャルを評価して投資は継続となっている。
ハイテク株の今後はどうなるだろうか? それはインフレ懸念がどうなるかということも重要だが、同じような場面でハイテク株のパフォーマンスがどうだったかをもう少し検証してみる必要があるだろう。
ちなみにインフレになると何故グロース株のパフォーマンスが落ちるのだろうか。以下の記事で少し説明しているのでそちらも参考にしてもらいたい。