ドラッケンミラー氏: 現金給付がドルを暴落させる理由

前回に引き続きCNBCによるスタンレー・ドラッケンミラー氏のインタビューである。

財政出動と中央銀行

2020年初頭に新型コロナウィルスが世界的流行となった後、日本やアメリカの政府は大規模な景気刺激策を行なった。アメリカではトランプ政権が2.2兆ドル、バイデン政権が1.9兆ドルの財政政策を行なっており、これが景気回復と株価の高騰を支えている。

日本もアメリカもコロナ以前に既に莫大な政府債務を抱えていた。にもかかわらずこのような大盤振る舞いが可能だったのはなぜか。ドラッケンミラー氏は次のように説明している。

このような財政出動は中央銀行の助けなしには不可能だっただろう。中央銀行が紙幣を刷ってそのための資金を作っている。

正確な数字は覚えていないが、債券の発行額を一気に6割も増やすようなことをすれば、中央銀行の助けなしには債券市場は崩壊していただろう。

しかしそうはならなかった。中央銀行が市場にあふれるはずだった債券を買い上げたからである。結果として金融市場は今、物価が高騰するのではないかとの懸念で持ちきりである。前回の記事を置いておこう。

長らく出なかった紙幣印刷の副作用がついにアメリカでは出つつある。しかし景気刺激をすることはとりあえず出来ている。ドラッケンミラー氏は次のように続ける。

だからこの大規模な財政政策を可能にしているのは中央銀行だ。問題は、もしインフレになるとすれば、いや仮にならないとしても、負債は莫大なものになるということだ。

これは議会予算局の想定でわたしではないが、中央銀行の支えがなくなれば10年物国債の金利は4.9%になるという。そうすれば政府支出の30%が国債の利払いで飛ぶことになる。

中央銀行の支えがなければそういう世界になるのである。その結果どうなるか? ドラッケンミラー氏はこう続ける。

そうすると中央銀行はそれをマネタイズせざるを得なくなる。そして中央銀行がそれをマネタイズするとき、それはドルにとって酷い結果となるだろう。

当然そういう結果になるだろう。インフレとはそういうことである。インフレとは貨幣の価値が下落することであり、つまりはドルの価値が下落することである。

インフレとドル安の違い

しかし市場経済は面白いもので、物価の上昇と為替の下落は必ずしも同じ時期に起こるものではない。例えば1980年代においてはレーガン大統領が同じような政策を行なったが、その結果としてドル安が起きたのは何年か後のことだった。

この記事で少し説明してあるが、コロナ相場でドルが実際に下落するのはいつになるだろうか。このことについてはもっと詳しく検証する必要があるだろう。

多くのファンドマネージャーがドルの下がるタイミングを狙っている。世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏もその1人である。

そろそろドル下落をしっかり考えなければならない時期だろう。ドル円は今のところ次のように推移している。