ドラッケンミラー氏: 中央銀行はインフレで火遊びをしている

かつてジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを率いたスタンレー・ドラッケンミラー氏がコロナ禍の量的緩和をやり過ぎだと批判している。CNBCによるインタビューをこの記事では取り上げたい。

コロナ禍とドラッケンミラー氏

昨年は多くのヘッジファンドマネージャーが株価の回復を予想できなかった。筆者も失敗した1人であり、ドラッケンミラー氏も同様である。

今回のインタビューでドラッケンミラー氏はその失敗を率直に反省している。彼は次のように述べている。

去年の今頃、ある経済クラブで経済のV字回復はおとぎ話だと主張したが、それはどうしようもなく間違っていた。

去年の株価回復は政府による現金給付が個人消費を押し上げ、それが企業利益も潤して株価に還元された。現金給付の効果については以下の記事で詳しく説明している。

こうした背景を踏まえてドラッケンミラー氏は次のように続ける。

中央銀行と米国議会がやったことは理解できる。リスクとリワードの観点から言えばそれは正しい決断だったのだろう。

だがその後どうなったか。市場経済に注ぎ込まれた資金が過多となったためアメリカでは物価高騰が始まっている。そしてそれは株価をも圧迫し始めている。

最古参の投資家の1人であるドラッケンミラー氏は当然これを心配している。資金が過多となって株価がバブルになるのも問題だが、資金過多で物価が高騰し市民が苦しむ上に株価も下がるとすれば、緩和政策に何の意味があるのだろうか。

ドラッケンミラー氏は次のように主張する。

状況が変われば彼らも変わらなければならない。状況はあれから劇的に変わっている。

去年の春、中央銀行はたった6週間の間に、2009年から2018年に行われた量的緩和の量を超える量的緩和を行なった。

それは劇的な量的緩和だった。ドラッケンミラー氏は本来、量的緩和政策には賛成していない。彼は先進国経済が低成長なのは量的緩和政策のせいだと考えている。

しかしV字回復を読み間違えたドラッケンミラー氏は中央銀行が去年行なった措置を責めることはない。

はっきり言ってそのことに問題があるとは思っていない。去年、経済はブラックホールの中で、何処に向かっているのか誰にもわからない状況だった。

だが問題は別にある。彼はこう続ける。

問題があると思っているのは、中央銀行がワクチンの後に、そして小売店売上が通常以上の水準まで上がった後にも、2.5兆ドルの量的緩和を予定していることだ。

ブラックホールは起こらなかった。それは良いことだ。しかし彼らはいまだブラックホールの中にいるかのように振る舞っている。そして経済は実際には加速している。

中央銀行の現在の政策は完全に不適切だ。

止まらなくなるインフレ

筆者と同じように、ドラッケンミラー氏も早くからインフレに警鐘を鳴らしていた投資家の1人である。

彼もわたしも今年はそれで大いに儲けている。しかし投資家はどういう状況でも儲けられる。インフレでなくなれば別の投資を行うだろう。

しかし心配すべきは経済がどうなるかである。経済を救う名目で行われた緩和政策が日用品の価格を高騰させようとしている。株価についてもインフレは必ずしもプラス要因ではないことは以下の記事で解説しておいた。

中央銀行の不適切な政策の結果は何だろうか? ドラッケンミラー氏によれば、それはドルの暴落である。

このインタビューの中でドラッケンミラー氏はドルの下落予想について詳細な解説を行なっている。示唆に富んでいるがやや難しいので分かりやすく噛み砕く必要があるだろう。また別の記事で個別に取り上げたいと思う。それまではレイ・ダリオ氏による同じ予想を読み返しながら待っていてもらいたい。