米国証券取引委員会: ビットコインを禁止するのは愚かなこと

著名ファンドマネージャーらが注目し始めたことによりビットコイン価格は暴騰しているが、一方で政府がビットコインを禁止するのではないかと懸念する投資家もいる。

Bridgewaterのレイ・ダリオ氏などはビットコインを評価しながらも、かつてアメリカ政府が戦時中でもないのにゴールドの保有を禁止した例を挙げ、ビットコインの禁止は十分あり得ると主張した。

では政府側はどう考えているのだろうか。米国証券取引委員会(SEC)のヘスター・パース氏のビットコインに対するコメントを紹介したい。これがなかなか興味深いコメントとなっている。パース氏はMarketWatchのイベントで次のように述べた。

政府がビットコインを禁止しようと試みるのは愚かなことだ。

そもそもどうやってビットコインを禁止するのだろうか。政府は「ビットコインは許可されていません」と言うことは出来るかもしれない。しかしそれでも人々はそれを使い続けることが出来る。

意外も意外である。これは本心だろうか。勿論、これはパース氏の見解であり必ずしもSEC全体の見解ではないだろう。

実際、政府はビットコインを禁止することは出来なくても骨抜きにすることは出来る。暗号通貨取引所を禁止するだけで大半の人々はビットコインを買わなくなるだろう。また、決済の手段としての利用についても小売店にビットコインを使わせないようにする措置は簡単に出来る。

個人をひとりひとり規制することは現実的に難しいかもしれないが、企業や店舗を規制することは政府にとって簡単である。コロナ対策もそのように行われている。

「禁止」と「規制」のはざま

パース氏はSECの中でも暗号通貨にフレンドリーな論者として知られている。しかしパース氏も暗号通貨を単に野放しにしておくことを望んでいるのではない。彼女はFox Businessのインタビューで次のようにも述べている。

本質的にP2Pなテクノロジー(訳注:非中央集権的な技術)を禁止することは非常に難しいと思う。他の技術でもそうだが、規制当局の目標は人々がその技術を合法的な目的だけで使い、不適切な用途に使わないようにすることだと思う。そういう規制が行われるだろう。

妥当な意見に聞こえる。しかし政府側が社会に何があるべきかを考えるときには、それが合法かどうかの議論はほとんど意味を為さない。何が合法かを決めるのがそもそも政府だからである。実際に政府側の全く身勝手な理由でアメリカではゴールドの保有が禁じられたことがある。アメリカ政府は自分の積み上げた債務の返済のためにドルの価値を切り下げ、自分の資産を守るためにドルをゴールドに替えようとしたアメリカ国民を罰した。

パース氏の言う通り、実際にはビットコインは完全に禁止にはならないかもしれない。しかし合法に保ったままほぼ完全に骨抜きにすることは出来る。そして恐らくそれは将来実際に行われるだろう。

それを逃れられるのは、以下の記事でも述べた通りゼロ知識証明などの取引秘匿技術を持った新しい暗号通貨だろう。ビットコインにはそれがないのである。

パース氏は暗号通貨の界隈でなかなか人気があるようである。規制当局と暗号通貨利用者がこのように和気あいあいと交流できる間はまだ平和である。しかし遠からず血みどろの場面が演じられるだろう。スイスの銀行業界に何が起こったかを知っている人間にはそれが不可避の未来であることが分かるのである。