ビットコインより上昇しているアルトコインとその理由

不思議なタイトルである。まさか自分が暗号通貨の推移予想を真面目にする日が来るとは思っていなかったが、何人かの読者も同じように思っているだろう。しかし金融市場における投資のやり方で投資ができるものは投資家にとって何でも利益源になるのである。

暗号通貨の価格上昇

さて、年始からビットコインの価格が上昇している。

著名ファンドマネージャーらが暗号資産に興味を持ち始め、機関投資家の資金が流入しているからである。

ビットコインの年始来の上昇率は72%であり、大抵の資産クラスを大きく上回っていると言える。

ビットコインの上げ相場については何度も報じているが、今回報じたいのはビットコイン以外の暗号通貨(アルトコイン)の価格推移についてである。ここでは時価総額上位5位の暗号通貨を取り上げてみよう。

  • ビットコイン(BTC): 9,277億ドル
  • イーサリウム(ETH): 2,618億ドル
  • バイナンスコイン(BNB): 782億ドル
  • XRP(XRP): 509億ドル
  • テザー(USDT): 494億ドル

時価総額トップのビットコインは上がったが、他の通貨はどうなのだろうか? 順にチャートを見てゆきたい。

まずは第2位のイーサリウムである。

年始から206%の上昇となっており、ビットコインより大きく上がっている。しかしこの上昇率は5つの中でトップではない。

他のアルトコインはどうなのだろうか。次は暗号通貨取引所Binanceが発行するバイナンスコインの価格チャートである。

何と1053%の上昇となっている。大手暗号通貨取引所のBinanceがサポートしていることが要因になっているのだろう。

非中央集権的であることが暗号通貨の元々の目的だったが、中期的な値動きとなると話は違ってくる。特定の大きな資金流入元のある通貨は強いということだろう。

次はRipple社の決済システムリップルで使われているXRPである。

389%の上昇率で、バイナンスコインよりは低いがイーサリウムよりは上となる。やはり公式サポートのある通貨は今のところ強いようだ。

最後にテザーである。

ほぼ1で推移し続けている。何故かというとテザーはドルにペッグ(固定レート)されているからである。お陰で値上がり益は得られないが、そういう暗号通貨もあるということである。インフレヘッジにもならないので個人的には魅力を感じないが、時価総額5位となっている。しかしやはりドルの価値に吸い寄せられる仕様はマイナスだろう。

アルトコイン価格上昇の理由

ビットコインの上昇については長らく報じてきたが、ドルペッグのテザーを除いて実はアルトコインの方が上がっている。

何故か。ここの読者ならばその理由は分かるはずである。以下の記事に書いたことを思い出してもらいたい。

筆者はビットコインがその普及上限(マイナード氏の60万ドルが1つの目安である)に達した後、より高機能な暗号通貨によって置き換えられると予想している。

ビットコインは一番最初の暗号通貨である。そのため機能も一番原始的であり、ビットコインの採掘のための電力消費量は現時点でもノルウェー全体の電力消費量に匹敵している。ビットコインが本当に決済手段として世界中に普及すれば世界の電力需要の半分がビットコインということにもなりかねない。ビットコインは投機の対象にはなっても、実際に世界中で決済に使われる通貨になることはほとんどありえないのである。

一方でビットコインの抱える問題を解決し、多くの機能を盛り込んだ暗号通貨が次々に生まれている。いずれはビットコインを時価総額で追い抜く通貨が生まれるだろう。その品定めが既に始まっているのである。

結論

筆者はビットコインに対するアルトコインの価格上昇を長期トレンドだと考えている。しかし上がらない通貨もあるだろう。暗号通貨を選ぶことが重要である。時価総額上位を見る限り、選別のポイントは「多機能」「組織的サポート」の2点である。今のところ後者の要因の方が力強いように見える。

一方でアルトコインの相対的上昇は暗号通貨全体の上げ相場において見られているトレンドでもある。つまり、今年のビットコインの上昇をいち早く予想したマイナード氏の言う通り暗号通貨が短期的に下落するなら、アルトコインの優位も一時的に巻き戻る可能性があるということである。

しかし長期的なトレンドを見失わずに投資を続けてゆきたいものである。特に、まだまだ先ではあるが、ビットコインから降りるタイミングについても考えなければならない。3年前の記事に書いた通り、ビットコインは他の暗号通貨に追い抜かれていずれは暴落するだろうからである。

3年前の記事だが、その場で使えなくとも後で投資に有用になる予想もある。しかし一番凄いのは、やはり数十年前にこうした状況を予想していたハイエク氏だろう。彼の言う通貨間の競争が今まさに起きようとしているのである。