2015年世界の金融市場: 米国株、欧州株、日本株、金、原油

2015年ももう後半であり、金融市場は金や原油などコモディティ価格の下落、米国の利上げ、中国株の暴落など、様々なトレンドが入り混じる様相を呈している。

これまでの単なる量的緩和相場とは異なる状況であり、単純に中央銀行に従っていれば利益が出るという状況ではない。そこで、ここで一度、世界の金融市場を俯瞰してみたい。個別銘柄よりもマクロ的分析が必要な場面なのである。

米国株

先ず、マクロで見れば米国株は買う理由のない資産クラスである。量的緩和が終わり、利上げを控えていることで、株式から債券への資金流出が懸念されている。ファンダメンタルズで見ればバブルではないが、割高であることは確かである。

米国株全体は年始からほとんど上がっていないが、一方で株価が倍以上になったNetflix (NASDAQ:NFLX、Google Finance)など好調な一部のグロース株やバイオ銘柄が、他の軟調な銘柄の下落分を補っている。以下の記事で書いた通り、グロース株については必ずしも割高ではない。

しかし、これまでS&P 500の空売りを現物株のヘッジをして薦めてきた通り、米国株は一部のセクターを除けば全体として軟調である。ドル高が輸出を圧迫しており、原油安が消費を活性化させることが見込まれているものの、同時に産油国でもある米国のエネルギー関連銘柄の先行きは暗い。

ただ、個別株には買えるものがあり、ドル高と原油安の恩恵を受ける航空株からはJetBlue (NASDAQ:JBLU、Google Finance)などが、市場が急落すれば買える銘柄である。

また、以下の記事で紹介した原油タンカー会社のTeekay Tankers (NYSE:TNK、Google Finance)は市場全体に比べて堅調な動きとなっている。エネルギー関連でも輸送銘柄は供給増の恩恵を受けるのは説明した通りである。

欧州株

欧州株の先行きは微妙である。結局は量的緩和の2016年9月以降の継続がどうなるかにかかっている。量的緩和は確かに効いているが、効いているから続けるのか、効いたから終わりにするのか、ECB(欧州中央銀行)はスタンスを明確にしていない。

しかしながら、一部の資産株は量的緩和前の株価水準に近づいており、こちらも急落すれば買いを入れたいところである。

個別株では、これまで薦めてきたように、フランクフルト国際空港を保有するFraport (XETRA:FRA、Google Finance)は、資産インフレと原油安による燃料費減、そしてユーロ安による域外旅客増の恩恵を受ける本命である。しかし、ECBが緩和を継続しないリスクを割り引いた買い値で購入したいところである。

また、ヨーロッパ経済は海外の動向にも影響されるだろう。これまでの欧州の輸出動向は、中国経済の減速を米国向けの輸出増で補ってきた流れだが、今後はこの傾向が更に顕著になるだろう。米国経済がいつまで保つかである。しかし、輸出が停滞した場合には、ECBの緩和継続が期待できることになる。やはり資産株である。

日本株

日本株は、現状の金融市場で数少ない、マクロで買う理由のある資産クラスである。以下の記事で書いたように、日銀は量的緩和を当分終わらせることができない。あるいは、一度終わらせても2017年には再開しなければならなくなるだろう。

一方で、ファーストリテイリング (TYO:9983、Google Finance)などの一部銘柄やREITなどはバブルの領域であり、しかし日銀が資産買い入れを続ける限り、株価は支え続けられるだろう。空売りの機会はまだ先である。

逆に、個別株は買いにくいものが多い。量的緩和が継続するのであれば不動産株を買いたいところであるが、消費増税が不動産投資を抑制している。2017年に消費税が10%に上がれば、経済はさらに冷え込むだろう。証券株の安値買いなどが良いのかもしれない。

金については記事にしたところだが、その後更に急落し1075ドルあたりまで進んだところで反発した。

上記で書いた通り、個人的には利上げ後に1000ドルを割るところまで予想しているが、下落ペースがあまりに早い場合、チャイナリスクが想定より大きい可能性があるので注意が必要である。中国には統計がないので、本当のところは誰にもわからないのである。

原油

原油安については昨年末に以下の記事を書いており、原油価格は60ドルを天井として上値を押さえつけられながら推移するだろうと書いたが、これは見事に当たり、5月から7月まで原油価格は上値を試したが、60ドル付近のラインを上抜けることができず、その後急落した。

この記事で推奨した原油コール・オプションの売りは、個人的に2015年で最も儲かった取引の一つである。単なる空売りでは3月以降の原油価格反発の影響を受けただろうが、コールの売りはあるラインを下回る限り、下落せずとも利益が出るのである。

今後についてはこの60ドルのラインに、世界的な景気減速リスクとイランの原油輸出解禁による供給増を割り引いた価格で取引されることになる。つまり、原油安は続くということである。航空株は買いである。

総括

中国の株価急落以降、世界的な景気減速リスクが強く認識されるようになったと感じている。要するに、どの国もまともに成長していないのであり、世界的な低金利は長く続く可能性がある。

金利が上がらなければ、株式から債券への資金流出は延期されることになり、株式市場の量的緩和バブルはより長く続くかもしれない。以下の記事で書いたポートフォリオ・リバランスの逆流、量的緩和バブルの崩壊は、延期されるということである。

もしそうなれば、やはりここから買うべきは欧州株である。ECBの考え方は読みづらいが、十分な安値で買いを入れればリスクは抑えられるだろう。

難しい局面だが、中央銀行、物価動向、コモディティ価格など、世界の指標をすべて見通して投資を続けてゆきたい。金融市場の一面だけを見ることのリスクが非常に高い局面になってきたのであり、こういう場面でリスクが抑えられるのは、やはりグローバルマクロ戦略だろう。