著名投資家ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementは新型コロナの流行で値動きの激しかった2020年の相場で23.2%のリターンを獲得した。Bloombergなどが報じている。
ソロス氏のコロナ相場トレード
ソロス氏本人が投資活動よりもOpen Society Foundationを通した政治活動に専念して以来、Soros Fund Managementの動向は掴みにくくなっていた。ソロス氏があまりメディアで投資について語らなくなったからである。
Form 13Fを見る限りでは米国株をそれほど積極的には買っていなかったことだけは分かっていた。
それで2020年の上げ相場を逃したのかと思っていたが、ソロス氏は別の場所で大いに儲けていたようである。
トレードの内容についてはSoros Fund Managementの現CIO(最高投資責任者)であるドーン・フィッツパトリック氏がBloombergのインタビューで少し語っている。
2020年の春、われわれは40億ドル以上の金額を下落で割安となった資産に投じた。当時、資産に買い手はいなかった。われわれは資金の供給元となった。
2020年の春とは新型コロナウィルスがヨーロッパやアメリカにも広がり、株式市場が暴落していた時である。当時、Soros Fund Managementが目をつけたのはモーゲージREIT(住宅ローンを保有するファンド)だったという。
モーゲージREITは2020年初頭に困難に直面した。彼らの保有している資産は彼らが思っていたほど流動性がないことが判明した。期限までに資金が用意できなかった時、彼らは完全に間違ったタイミングで資産を売却することを余儀なくされた。
われわれは公開市場と非公開市場の両方でアクティブに動いた。
コロナ禍でのロックダウンで宿泊業界に閑古鳥が鳴き、住宅市場が混乱していたのは記憶に新しい。REITは一般的にレバレッジを利用している。つまり借金して資産を買っている。なので保有資産が一気に下落した場合、資産を売らなければ借金を返済することができなくなる事態に直面する。
モーゲージREITは資金を調達するために保有資産の住宅ローンを売らなければならなくなった。資金を調達できなければ破産するため、どんな安値であろうとも資産を売らなければならない。それをSoros Fund Managementが安値で買い取ったということだろう。
2020年3月がどれほどの混乱であったかは当時の記事を参考にしてほしい。丁度ソロス氏の投資理論を使って株式市場を分析した記事を3月末に書いている。
動くべき時に動けること
フィッツパトリック氏はレバレッジを上手くコントロールすることの重要性を指摘する。そうでなければ「完全に間違ったタイミングで」資産を売却せざるを得なくなるからである。彼女は次のように続ける。
Soros Fund Managementはどんなファンドよりも機動的に動ける。世界最大級のファンドは皆、レバレッジを掛け、非常に機械的な損切り戦略を持っている。そういうファンドは去年3月のような暴落時にうまく動けない。
レバレッジを掛けて株を買っている場合、暴落時には追証に追い込まれ、株が安値になっている時に新たに買い増すどころではなくなってしまう。去年3月の暴落時にはそういうファンドが多かったのだろう。しかしフィッツパトリック氏は言う。
しかしわれわれはそういうタイミングのために存在している。
売り叩かれている資産があるとき、倍賭けではなく3倍賭けできるようにいつも準備している。
結論
フィッツパトリック氏は2017年にSoros Fund ManagementのCIOとなった女性である。
ソロス氏のファンドの投資責任者はこれまで何人も存在しているが、ドットコムバブル時に辞職したスタンレー・ドラッケンミラー氏の後の担当者たちには正直あまり魅力を感じてこなかった。
しかしフィッツパトリック氏はなかなか面白そうな人物である。ちなみに彼女の先輩にあたるドラッケンミラー氏はコロナ禍で金利上昇予想を的中させている。
フィッツパトリック氏が就任して以降、Soros Fund Managementの年間パフォーマンスは数%と年金ファンドのようになっていたため、ソロス氏は守りに入ったのかと揶揄されたこともあったが、コロナ相場でようやく花が咲いたようである。ソロス氏の元で働くことについてはドラッケンミラー氏が色々語っていることもあるので、そちらの記事も参考にしてもらいたい。