7月14日にウィーンで行われていたイラン核協議で、イランと欧米6カ国は、イランの核開発を制限する見返りに、イランへの経済制裁を段階的に解除することで同意した。
この合意により、イランの原油と天然ガスが欧米諸国へ輸出されることとなり、元より供給過剰が懸念されていたエネルギー市場に更なる供給が流れ込むことになる。イランは石油埋蔵量で世界4位、天然ガス埋蔵量では世界2位である。
米国のシェール産業、減産しないサウジアラビアに加えて今回のイランと、度重なる供給増を原油価格は度々織り込んできたが、市場がまだ完全には気付いていないのが海運株への恩恵である。
原油供給増で二重に恩恵を受けるタンカー
先ず、原油安の原因が需要減ではなく供給増である場合、タンカーにとっては二重の意味でプラスである。一つはより多くの原油を運ぶことになること、もう一つは原油安による燃料費の軽減である。タンカーを動かすためには原油が必要だからである。
6月以降、ばら積み船のスポット運賃を示すバルチック海運指数(チャート)が急上昇している。原因の一つとして、供給過剰の原油を貯蔵するために、業者がタンカーを倉庫代わりに使っているのではないかと言われている。この傾向は原油の供給過剰が続く限り、長く続くのではないかと思われる。
Teekay Tankers (NYSE:TNK)
銘柄としては、米国のTeekay Tankers (NYSE:TNK、Google Finance)が挙げられる。この銘柄は2014年の海上運賃低迷による売上減から急回復しており、2015年1Qの売上高は前年同期比で68%増となっている。
現在の株価は$7.39程度だが、アナリスト予想では2015年の一株当たり利益が$1.36、2016年が$1.19となっており、このまま原油の供給過剰が続けば、株価は$10以上に上昇すると予測しても良いのではないかと思う。
懸念はやはり中国経済
懸念があるとすれば、やはり中国の景気減退である。中国経済は明らかに成長が鈍化しており、不動産バブルが軟着陸に失敗すれば、コモディティ市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。しかし、この懸念については別のポジションによってヘッジすべきだろう。
ちなみに、以前も述べたように上記の中国経済の問題は、最近の中国株の急落とは基本的には別問題である。この辺りについては以下の記事を参考にして欲しい。