金融市場ではここのところインフレ懸念による金利上昇が話題となっている。低金利に支えられてきた株式市場にとっては金利上昇は一大事なのである。
一方で株式市場をセクターごとに見てゆくとその影響は様々である。今回の記事では高金利の影響をセクターごとに見ていきたい。
高金利で下落するハイテク株
先ずは長期金利のチャートから掲載しよう。
ここの読者には見慣れたチャートかもしれないが、それでもかなりの上昇率である。
この金利上昇で真っ先に影響を受けたのはこれまで上がってきたハイテク株である。先ずは比較対象として米国の株価指数S&P 500のチャートを掲載しよう。
そして次がAmazon.comのチャートである。
コロナ相場の初期には一番に上がってきたAmazon.comが全体の上昇相場において停滞している。特にここ1ヶ月ほどは金利がかなり高いレベルにまで上がってきたことを投資家が懸念しており、Amazon.comの株価も急落となっている。このトレンドは金利が上昇し続ける限り続く可能性がある。
逆境を予想していたドラッケンミラー氏
ここまで議論してここの読者ならば思い出すことがあるかもしれない。ドラッケンミラー氏がハイテク株に懸念を示しながらもハイテク株のホールドを選択していたことである。
ドラッケンミラー氏は様々なハイテク株を買っているが、最大ポジションであるMicrosoftのチャートを掲載しよう。
銘柄選択の成果かAmazon.comよりは調子が良い。しかし2番目に大きいポジションはそのAmazon.comであり、こちらは下がっている。
ドラッケンミラー氏が次のように言っていたことを思い出したい。
難しい問題だ。これから数年4、5%のインフレが来るとすれば、高成長株が他の株に比べて非常に不利になることは歴史的に考えて異論の余地はない。
しかしコロナ禍におけるリモートワークへのシフトは始まったばかりだとして買いを継続していた。その後ドラッケンミラー氏の予想通り金利が上がり、ハイテク株には試練の時となっている。
高金利で上昇する金融株
一方で株式市場には金利上昇で恩恵を受ける銘柄もある。銀行や保険などの金融株である。
これらの企業は基本的に長期金利から収入を得る。銀行ならば預金者に短期の金利を払いながら預かった預金で長期国債を買って金利収入を得る。保険会社は得た保険料を同じく長期国債などに投資する。
したがって金融株にとっては金利上昇はポジティブなのである。例えば代表的な銀行株であるWells Fargoのチャートを見てみよう。
金利が上がり始めた去年の秋から株価が倍近くになっている。
また保険大手のMetlifeの株価は次のようになっている。
銀行株と同様の好調である。
結論
この記事で言いたいことは、一言で金利上昇と言ってもセクターによって反応は様々だということである。高金利が懸念されるとしても株式市場で生き残ることはできる。あるいはその時その時にふさわしい銘柄を見つけていけば、1つの銘柄に賭け続けるよりも大きなリターンを上げることはできるだろう。
一方で、確かに金利上昇は金融株にはプラスなのだが、債券を持っていてもインフレで価値が下がってしまうので皆が債券を売り、結果として金利高になっている状況で、債券の買い手である金融株が株式市場で随一のリターンを上げている状況に危うさも感じる。繰り返すが金融株はリターン(金利)がインフレ分より少ないという理由で皆が投げ売りしているものを買う側なのである。
金融株が現在の株式市場の筆頭セクターであるという状況は、今の株式市場について何かを語っている気がする。少なくともインフレと銀行株上昇が共存する状況は長くは続かないだろう。