世界最大のヘッジファンド: ドル下落の時は近い

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が金利とドルの価値についてLinkedIn上の自身のブログで語っているので紹介したい。

金利上昇からドル下落へ

まず金利とインフレの話から始めよう。ここでは何度も取り上げている通り、アメリカでは現金給付などコロナ禍における未曾有の資金注入のために物価高騰の初期症状が始まっている。

そのために昨年後半から金融市場では長期金利が上昇している。アメリカの長期金利のチャートは次のようになっている。

これまで低金利に支えられてきた株式市場にとって金利上昇はネガティブな要因であり、株式市場が金利上昇に何処まで耐えられるのかということが市場では注目されている。

金利上昇とはつまり債券が売られているということである。債券はこのまま売られ続けるのだろうか? ダリオ氏はアメリカの債券が過大評価されていると主張する。そしてアメリカの債券がこれまで買われてきた理由を次のように説明する。

世界中の機関がアメリカの債券を保有しているのはドルの基軸通貨としての特権的地位があるためだ。

しかしここの読者には周知の通り、ダリオ氏はコロナを起点にアメリカの覇権国家としての地位は凋落すると予想している。

基軸通貨ドルのターニングポイント

今回、ダリオ氏はその凋落のターニングポイントについて少し具体的なことを語っている。次のコメントを紹介しよう。

論理と歴史を考えれば分かることだが、債券の需給に問題が生じ金利が経済状況に望ましい以上に上がってしまうと中央銀行が判断した場合、中央銀行は紙幣を印刷し債券を買い入れ、債券利回りに実質的な上限を定めるようないわゆる「イールドカーブコントロール」を行う。しかしそれは貨幣の価値を毀損する。

米国ではまだイールドカーブコントロールは行われていない。日本では行われているが、幸か不幸か高税率が重しとなってデフレのままとなっている。しかしアメリカではインフレが進んでおり、インフレと金利上昇の組み合わせは貨幣価値に対して壊滅的な効果を持ってしまうだろう。

アメリカの中央銀行はまだ金利を抑えようとはしていないため、米国の長期金利は自由に上がり続けている。結果としてドルは少なくとも円などに対してはまだ上がっている。ドル円のチャートは次のようになっている。

しかし紙幣の刷り過ぎでインフレが起こっている時に中央銀行が金利を無理矢理抑えようとするとき、ドルの最後の下落相場が始まってしまうだろう。以前のダリオ氏の記事も参考にしたい。

結論

ダリオ氏は次のように言う。

中央銀行のそうした動きは長期の債務の膨張・収縮サイクルの一番最後に起こるもっとも破壊的な段階の始まりとなるだろう。

ダリオ氏の目には長らく続いたアメリカの覇権の終わりが本当にはっきりと見えているように聞こえる。そして恐らくアメリカ国民に対してかなりあからさまに警告している。

税の変化と資本統制に注意した方が良いだろう。

「金を取られるぞ」ということである。ハイエク氏による以下の論説も参考にされたい。

しかし筆者が一番聞きたいのは次の点である。社会保険と所得税と消費税で既に収入の半分以上を政府に持っていかれている日本の方々はどうするのか? 数百万取られて10万返してもらって喜ぶのか? 日本は既に資本統制されているのである。お気づきだろうか。